高速道路では「交通集中」が渋滞原因の7割を占める
交通制御工学を専門とする大口敬教授(東京大学)によると渋滞とは『その地点の交通容量を超える交通需要が流入しようとするときに、ボトルネックを先頭にしてその上流区間に生じる車両列における交通状態』と定義できるという。
そして科学的にはボトルネックでのみ交通容量は計測できるのだともいう。たしかに順調に流れている場所においては、それが交通容量の何パーセント程度なのか観測することはできない。渋滞して初めて、その地点の交通容量(≒渋滞せずに通過できる車両数)が明確になるという、まるでパラドックスのような話になるのだった。
それはさておき渋滞の発生要因といえるボトルネックになる場所には共通性はあるのだろうか。
高速道路でいえば、渋滞の発生要因は大きく3つある。もっとも多いのが交通集中でネクスコ東日本の調査によると約7割を占める。そのほか事故によりボトルネックが生まれるケースが2割弱、工事その他で1割程度となっている。
もっとも前述のように交通容量を超えた状態を交通集中というわけだから、それが渋滞の原因というのでは説明不足と感じるだろう。高速道路における交通集中の要因を見ていくと、上り坂およびサグ部(下り坂から上り坂にさしかかる凹部のこと)が6割強と最多要因となっている。ほかには、接続道路やインターチェンジなど車両の流入のある箇所での渋滞発生が25%強、トンネル部が4%程度となっているのが目立つくらいだ。
とくにトンネルと上り坂(サグ部)という条件が重なっている場所はボトルネックとなりやすい。しかし車線も変わらないのに交通集中が起きるというのは不思議な話だ。
事故や工事などで車線規制がされているのであれば交通容量を超えてしまうというのは想像しやすいが、ただ上り坂になっているだけでボトルネックになる理由は何であろうか。ここで考えてほしいのは交通容量というのは道の幅ではなく、一定時間にどれだけの車両が通行できるかという点で測られるという面があるということだ。
上り坂やトンネルというのはドライバーが意図せずに速度が落ちやすく、すなわち道幅や車線数が変わらなくとも、下り坂や平坦路に比べて、交通容量が落ちてしまいがちだ。そのため交通需要(走行する車両の数)が増えたときに容量を超えやすく、そこが渋滞を生み出してしまうというわけだ。つまり、すべてのドライバーがサグ部や上り坂など構造的にボトルネックになりやすい場所で速度を落とさなければ渋滞は起きえない。逆にいえば、工事や事故などで車線規制が行なわれている場所以外での渋滞はドライバー自身が引き起こしているといえる。