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ルーフの脱着も大変だし収納場所も面倒じゃない? それでもポルシェの「タルガトップ」が存在するワケ (2/2ページ)

ルーフの脱着も大変だし収納場所も面倒じゃない? それでもポルシェの「タルガトップ」が存在するワケ

安全性を確保するボディ構造が必要だったために登場した

 ポルシェが伝統的に使い続けている車型に「タルガトップ」というボディ構造がある。この名を耳にしたことのある人も多いかと思うが、なぜこのボディ構造が生まれてきたのか、発祥となったポルシェの車史に沿って振り返ってみることにしよう。

 まず、タルガトップと呼ばれるボディ構造だが、これは脱着可能式のルーフトップを持つオープンエアを可能にしたボディの一形態と見なすことができる。厳密に言うなら、構造的にはクローズドボディのオープントップ可能モデルと表現したほうが、より正しいだろう。ちなみに、このタルガトップという名称は、ポルシェAGの商標登録で、ポルシェが伝統的に強かったレースイベント、タルガフローリオに由来するものだ。

 では、なぜ着脱式のルーフ構造が考え出されたのか? 戦後、自動車の車体形態は、屋根付きのクローズドボディが基本、標準とされてきた。自動車が全天候型でなければ都合が悪いことは、自動車が歴史的に実用の道具と考えられてきたことでも明らかだろう。屋根がなく、思い切り太陽の光と新鮮な外気を楽しめるオープンカーは、趣味性には優れていても実用の道具として考えた場合、ユーティリティの点で劣ってしまう。

 ポルシェ社は、戦後成功を収めたスポーツカーメーカーとして知られるが、発端は1948年オーストリア・グミュントで自動車メーカーとして起業。1950年から356(クーペ)の量産が始まっているが、ほぼ同時期にソフトトップ構造のオープンモデル、カブリオレがカタログモデルに加えられ、以後、申し訳程度の小さなウインドースクリーンを持つスピードスターが1954年に追加された。そして、さらにスポーツ指向を強めた550スパイダーを登場させる道のりを歩んでいる。

 こうした一連の356シリーズで、スポーツカーメーカーとしての基礎を固めたポルシェは、1964年に次世代モデルの911を登場させたが、規模が拡大しつつあった北米市場に対して問題を抱えていた。ポルシェは、356に続き911にもオープンモデルの設定を検討していたが、アメリカでオープンカーの安全基準が見直され、従来どおりのフルオープン構造のモデルの投入が難しい状況となっていた。ロールオーバー時に乗員の安全性を確保するボディ構造が必要とされるようになっていたからだ。

 この基準に応え、ポルシェが具体化したオープンモデルが、ルーフトップを脱着式とするタルガトップの構造だった。車体構造は、フロントウインドーまわりを支えるAピラーまわりはクローズドボディ車と同じ、Bピラー/Cピラーを兼ねる部分を幅広く堅牢に作り(疑似ロールバー構造)、転倒時はAピラーとB/Cピラーでキャビンを保護、支える構造である。

 911の場合、車両デザインを見れば明らかだが、クローズドボディ車よりルーフ全長ははるかに短い。見方を変えれば、短く脱着式としたルーフによってオープンエアモータリングを楽しめる構造としながら、クローズドボディ車並の車体剛性、強度の確保に成功したわけである。

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