今後コネクティッドサービスが一般化するための布石だ
昔のクルマでは車内で楽しめるものといったらラジオ、しかも標準デッキではAMラジオしか聞けないという時代もあり、FMラジオやカセットテープが聞けるのは高級車だけということも珍しくなかった。
その後、CDやMD(MDはもはや廃れてしまったが)といった外部メディアへと進化し、現在ではスマートフォンやタブレット端末を介してのサブスクリプションサービスで音楽を聴いたり、動画を楽しんだりするのもすっかり一般的となった感がある。
そんな時勢に対応してか、トヨタがリリースする新型車はディスプレイオーディオが標準となる車種も増えてきた。なかでもベテランユーザーの多いカローラでさえ、新型となったタイミングでディスプレイオーディオを標準化したというのはさすがに驚きを隠せないという声も多く聞かれたようだ。
確かに使いこなせるようになれば非常に便利なディスプレイオーディオではあるが、アナログ世代のユーザーにとってはなかなかハードルが高いというのもまた事実。カローラでも、車内でCDやDVDを楽しみたいという声が多く届いたようで、遅れてCD/DVDプレイヤーをオプション設定している。
ではなぜ、そこまでトヨタは多くの車種にディスプレイオーディオを標準装着するのだろうか?
それはトヨタが推し進める「コネクティッドサービス」が関係している。「クルマはどこまで人に寄り添えるか、どこまで幸福に貢献できるのか。未来の愛車のあり方を考えるTOYOTAのこたえ。それがトヨタのコネクティッドサービスです。」とあるように、クルマと「トヨタスマートセンター」が通信でやりとりすることで安心・安全、快適・便利なサービスを提供するものである。
センターのオペレーターを介することで、曖昧なリクエストにも対応できるオペレーターサービスや、遠隔で安全を守るセキュリティサービス、万が一のときに警察や消防へ通報してくれるサービスなど、オンラインで繋がることで、より多くのサービスを提供したいというのがトヨタの考えなのである。
そのためには、オンラインにつなげるために必要な通信機や、各種サービスに対応できるメインユニットが必要となる。当然ながら社外のナビゲーションやオーディオなどでは対応できないため、必然的に対応可能なディスプレイオーディオを標準で装備しているというワケだ。
実際のところ、コネクティッドサービスを使いこなしているユーザーは少数派ではあるが、近い将来コネクティッドサービスが一般化する可能性は高く、それに対して今から種を巻いているのがトヨタということになるのだろう。