現行の乗用ディーゼルは日常使いに長けている
レースでディーゼルエンジンが採用となったのは、2000年代中盤のル・マン・シリーズだが、これもディーゼル乗用車の普及を図るヨーロッパメーカーの思惑をACO(西部自動車クラブ、ル・マン24時間の主催団体)が汲んだもので、決してレース用の内燃機関として優秀だったからというわけではない。
むしろ、レースカーの内燃機関として適正があるのはガソリン機関で、たとえば出力面だけを見ても、進化によってリッター当たり100馬力も可能になったと言われるディーゼルに対し、ガソリン機関は1980年代中盤にリッター当たり1500馬力を可能にしていた。いずれも過給機付きだが、乗用車レベルで考える排気量枠であれば、圧倒的にガソリン機関のほうが高性能である。
ガソリン機関とディーゼル機関の優劣を比べるのであれば、それぞれが持つ特徴を車両の性格、特徴に当てはめるとわかりやすい。高回転、高出力、エンジン回転の上下が素早く、スロットルレスポンスに優れたガソリン機関はスポーツカー向き、回転上限が低く、低中速トルク特性が厚く、熱効率(燃費)に優れるディーゼル機関は、実用車(=乗用車)に向く内燃機関と区別することができるだろう。
また、日本の場合、ガソリンと軽油では燃料の単価に開きがあり(ヨーロッパではほぼ同価格)、軽油を使うディーゼル乗用車は、燃費性能のよさと合わせランニングコストで大きく有利になる長所がある。二酸化炭素の排出ゼロを目指し、内燃機関の有効期限(新車搭載時)は早くてあと10年程度と見られているが、かつて指摘されていた振動、騒音、低出力性、有害排出ガス成分などを解消した現行の乗用ディーゼルは、クルマを日常の足として多用する人には、使い勝手がよく経済性に優れたおすすめのエンジン選択肢である。