サーキットで本領を発揮するために誕生したのがタイプR
ホンダのミッドシップ軽スポーツカー「S660」の生産終了が発表され、駆け込み需要により実質的な完売状態になったということが話題となっています。本質的にはスポーツカーというのはS660のように専用プラットフォームであるべきと考える人も多いでしょうし、もっといえば専用パワートレインを持っているべきなのかもしれません。
その意味ではホンダのラインアップにおいて純粋なスポーツカーといえるのは、完全に専用アーキテクチャに基づく「NSX」くらいでしょうか。とはいえ、ホンダのスポーツカーといえば初代NSXによって生まれた「タイプR」というキーワードを軸に考えるべきという意見もあるでしょう。
初代NSXタイプRが誕生したのは1992年11月、当時の280馬力規制の影響もあってパワートレイン自体はファインチューンレベルですが、ボディやサスペンションのチューニングによってサーキットでのスポーツ走行を楽しめるように仕上がったモデルです。そのコンセプトをひと言でいえば「サーキットベスト」、スパルタンなことがタイプRという伝統は、この時点で明確になっていました。
また、初代のNSXタイプRではエクステリアの差別化ポイントとして、ボディカラーには1965年にF1初優勝を果たしたマシン(ホンダRA272)をインスパイアした専用色「チャンピオンシップ・ホワイト」を設定。さらにフロントに赤色のホンダ・エンブレムを採用しました。この2点は、以降のタイプRにおけるマストな装備として、ホンダのスポーツカースピリットを象徴するアイコンになっていきます。
そんなタイプRが、ホンダのラインアップにおいて一般化した(多くの人の手が届く価格帯になった)のは1995年のことでした。同年8月、FFのスポーツクーペ/セダンモデルのインテグラにタイプRが初設定されたのです。
その後、1997年8月にはシビックに初めてタイプRが設定されました。インテグラタイプRは1.8リッター、シビックタイプRは専用設計の1.6リッターエンジンを搭載。それぞれのカテゴリーでサーキットベストを目指したポテンシャルは、市販車ベースのモータースポーツでは最強のマシンとなっていきました。スポーツカーというよりは、モータースポーツで使える市販車といったキャラクターともいえました。