「自動運転はまだヨチヨチ歩き」の状態
筆者は、自動運転の量産化を議論する欧米での各種国際会議に、2000年代から定常的に参加してきた。
また、国が行う重要な自動運転実証試験の現場のひとつである福井県永平寺町で、交通政策を議論する永平寺町MaaS会議を取りまとめる、永平寺町エボルーション大使として、自動運転の実証および実用化に関する作業に直接関わっている。
永平寺町には全国各地の自治体、中央官庁、大学や公的研究所の学識経験者、自動車メーカーや自動車部品メーカーの関係者、鉄道事業者や高速道路管理者、そしてIT系企業関係者など、数多くの人たちが自動運転の普及に関する情報収集のため現地視察に訪れている。
こうした皆さんと「なぜ、自動運転の普及はなかなか進まないのか?」という議論をしてきた。そうしたなかで、現時点(2021年3月後半)で筆者が思うのは、いわゆる「社会需要性」についてだ。
平たく言えば、「自動運転は、社会のなかで、どこで、どのように、誰が、本当に必要としているのか?」ということだ。
2000年代中盤から2010年代にかけては、自動運転に関するセンサー技術、センサーから得たデータを解析する技術、自動走行をするための空間を見える化する高精度な三次元地図の生成、そして利用者や他の交通に対する安全性を最優先した法整備などが、国連など国際協議の場で議論され、それらが段階的に量産化され、法が施行されてきた。
そうした自動運転の量産化に向けた基盤が整ってきたうえで、これからは実際の需要と、それを事業として成立させるための事業戦略、また地方自治体などによる予算案の策定という段階に入ってきた。
ホンダの自動運転技術の開発責任者が言うように「自動運転はまだヨチヨチ歩き」の状態だ。これから先の普及の方法について、オーナーカー(乗用車・商用車)とサービスカー(バスやタクシーなど公共的な乗り物)の両面について具体的な議論が日本各地で進むことになる。