100台という台数に自動車メーカーが量産した意味が生まれる
では、100台限定にする本当の理由とは何なのか。
ひとつにはコストの問題があるだろう。ホンダセンシング・エリートを搭載するレジェンドのメーカー希望小売価格は税込み1100万円とかなり高価になっている。ここには5つのライダー(LIDAR)、5つのミリ波レーダー、2つのカメラといったセンサー類にかかるコストも含まれているのだろうが、それだけでは自動運転は実現できない。
自動運転レベル3を実現するために何年もかけて130万kmもの公道での実証実験を行い、1000万とおりのコンピュータシミュレーションを実施したという。その開発費を考えれば100台限定1100万円の売上でペイできないことは容易に想像できる。
実際、レジェンドの試乗時に受けたホンダのエンジニアによる説明の行間を読めば、おそらく現時点では売れば売るほど赤字になるのがホンダセンシング・エリートを搭載したレジェンドといえそうだ。
ならば販売台数をもっと限定すればいいのにと思うかもしれないが、数台レベルでは試作と変わらず、せっかく世界初の型式指定を受けた意味がなくなる。量産してこそ意味がある。
そして日本においては年間99台までは自動車メーカーでなくとも製造できる「組立車」という制度がある。逆にいうと100台以上を作ることができるのは自動車メーカーだけなのだ。つまり、自動車メーカーが型式指定を受けて量産したといえる最小単位が100台である。
ホンダセンシング・エリートを搭載したレジェンドが100台限定というのは、状況的にはそうした事情を考慮した部分もあると理解することができる。
また、ホンダセンシング・エリートを搭載したレジェンドは3年リース扱いのみとなっている。こちらにも合理的な理由は考えられる。リース販売のみで、リース終了後は車両を回収するということだが、つまり転売ができない仕組みになっている。前述したように、自動運転レベル3のトラフィック・ジャム・パイロットを利用するには十分な説明が必要だとすれば、簡単に売却できて、オーナーがころころと変わるのは歓迎できることではないからだ。
その意味ではオーナーが把握できるリース販売で、車両を回収するというモデルを採用したのは、ホンダが初物の機能として十分に配慮していることが見て取れる。