メーカーが行なう本当のレストアのレベル感がわかる機会になる
3)コンピュータ
この時代は今や死語のマイコン搭載の先駆け。ちなみにマイコンとはマイクロコンピュータの略だ。じつは今、この世代のマイコンたちに内部部品の損傷が発生していて、直すことができればいいが、直せないとそのまま廃車という例が増えている。コンデンサーの液漏れやハンダ剥がれなど症状はさまざまだが、ある車種特有のものではなく、どれでも起こりうることだけに、今回のレストアでどうするかは非常に気になる。現状、問題ないのでそのままというのもありだが、それだとフルレストアにならない気もする。
4)エアコン
伊藤さんのシーマはすでにエアコンが故障していて、部品が手に入らないので他車流用しているとのこと。詳細はわからないのだが、エアコン付き車両のレストアで問題になるのが、フロンガス。当時はR12というタイプで、よく冷えるものの、環境への影響が大きいため、R134aと呼ばれるタイプへと変更されている。
R12のガスは生産されていないので、今後長く乗り続けるには対策が必要となる。ただ、代替ガスにするか、システムごとそっくり入れ替えるかなど、対策に決定打はないというのが正直なところ。
またオートエアコンの先駆けで、コントロールユニットも故障する例があって、こちらも内部までチェックするのだろうか。他車流用がどういった形なのかわからないが、どうするか気になるところはけっこうある。
大きく気になるのはこの4つ。そのほか、パワステまわりや当時としては超豪華なオーディオでも故障例は多い。後者は走るのに直接関係するわけではないので、オリジナルにこだわらなければ替えてしまえばいいが、闇雲に他車のものに変えるのもレストアとは違うようにも思える。
そもそもレストアとは、一般的には予算やパーツの供給問題も含めて限界もあるし、仕上がりについては認識の違いでトラブルになることもある。要はレストア、とくにフルレストアの解釈や基準があいまいというのが基本にある。今回はメーカーが行なう本当のレストアとはどんなレベルなのかを目にするいい機会だし、レストア前の状態もある程度わかっているだけになおさらだ。
最後に一番注目したいのは、雰囲気。自動車メーカーだけに、超本気を出せばそれこそ、新車レベルにもできるだろうが、それだと伊藤さんに古いのと新しいのを交換してあげただけになってしまう。ちょっとしたキズは思い出だったりするわけで、海外のレストアではオーナーの思い出部分は残す、リアルなレストアも行なわれていたりする。30年もワンオーナーで乗り続けられてきただけに、その塩梅にも注目だ。
今回のレストアには半年ほどかかるとのことで、その完成には「きれい!」といった記事が出るだろうが、今回のポイントなど、クルマ好き目線でチェックしてみるのもいいだろう。