30年前のシーマをワークス体制でレストアする
ネットを中心にして駆け巡ったのが、女優の伊藤かずえさんが30年前に新車で購入したシーマを日産がレストアするというニュース。自動車媒体関係では、シーマに乗りつづけているのは知られていたし、ブログを見てもシーマ愛が半端ないことはヒシヒシと伝わってくる。
普段は自動車のことなど取り上げない媒体も、すごいこととして取り上げていて、なかには「レストア=分解して故障したところを直して元に戻すこと」なんて解説しているトンチンカンなものもあったりするが、シーマを日産がレストアするという、いわばワークス体制での対応は非常に喜ばしいこと。この点はまったく異議もなにもない。
ただ気になるのは、メーカーが行うにしてもレストアするのは並大抵のことではないということ。そもそもかなり欠品になってしまっているパーツをどうするか。伊藤さんもその点はわかっているようで、「部品取り車をもう一台買いたい」とか、「なくなるといけないので(部品を)ストックとして買っておいた」などと発言しているほど。
ある程度のパーツは流用や、試作車を作る部署によるワンオフ製作も視野に入れているのだろうが、それでも難しいものがあるように思える。気になるところをまとめてみたのが下記。ちなみに、伊藤さんのシーマはタイプIIリミテッドという最上級グレードで、特別装備、豪華装備が満載だ。
1)ゴム類
ウエザーストリップなどのゴム類はワンオフで作るのが非常に難しい。各メーカーの博物館などに保管されているレストア車を見ても、ゴム類は程度のいい古いものを再利用していたり、ヒビや亀裂をシーリング剤で埋めているものが多い。
シーマは今では考えられない、ピラーレスのハードトップなので、ウエザーストリップの数は少ないとはいえ、それでも各部に使われているし、伊藤さんのシーマも雨漏りが発生したことがあるという。
もちろん費用をかければなんでもできるが、そこまでは日産もかけはしないだろう。ロット、つまり数がまとまれば安くなるが、シーマのゴム類は需要がどれだけあるかは疑問だ。また、耐久性といった将来的な品質はよくわからないが、中国だと少量を安く作ってくるところはある。ただし、日産ワークスレストアでそんな部品は使わないだろう。
2)エアサス
シーマの持病がエアサスの抜けで、伊藤さんもブログやインタビューで「今まで2回交換している」という鬼門だ。故障とひと口に言ってもサスペンション本体からのエア抜けだけでなく、コンプレッサーの不具合もある。
しかもスプリング併用ではなく、エアサスだけなので、抜けるとシャコタンどころか、地面すれすれのベタベタになってしまう。また、サスペンションの機能がなくなってしまうので緊急的にも走れたものではない。エアサスゆえ、あのシーマ独特の尻下がりの加速となるだけに、低級グレードにあったコイルスプリングに換装するのはなしだろう(換装自体は可能)。
もちろんと言うのも変だが、パーツの多くは欠品だ。伊藤さん自身も一部をストックしているようだが、全部ではないようで、ないものをワンオフするのかは気になる。もちろんするとなると非常に大変だ。でもやっておかないと、長くは乗れない。