「イマドキ感」よりも「アメ車らしさ」が重要! キャデラックXT5に乗って感動したワケ (2/2ページ)

古き良きアメリカ車を感じさせるイメージに仕上がっていた

 いまは日本市場から撤退したフォードだが、日本市場で展開していたころに、エクスプローラー(U502型/FFになったユニボディモデル)は、デビュー時2リッター直4ターボと3.5リッターV6をラインアップしていた。3.5リッターV6を試乗したときには、“ズルベタ”とも表現される、アメリカ人の好むATのフィーリングなど、昔ながらのアメ車っぽさが色濃く残っている印象をフォード関係者に伝えると、「V6はアメリカでは、内陸部のお客様向けのラインアップとなります。そこの地域にお住いのお客様の多くは、伝統的V6のようなフィーリングを好まれるのです」とのことであった。

 今回試乗したXT5もまさに、古き良きアメリカ車を感じさせる試乗イメージであった。9速ATのフィーリングはまさに、多くのアメリカ人が好みそうなものであり、高速道路での中速域から高速域の加速などでも、アメリカでのフリーウェイ走行では、時速55マイル(約88km)あたりから、70マイル(約112km)までの間で走行することが多いので、その速度域あたりでの加速がじつにスムースで、高速道路走行が気持ちいいのもアメリカ車ならではのものと感じた。それと、ドアの閉まりの良さは秀逸であった。あれだけの重厚さは日系ブランドでは、あまりお目にかかったことはない。

 日本で販売されるGM車は左ハンドルのみとなっている。遠い昔に右ハンドルでウインカーレバーも進行方向右側(日本車と同じ)に移設し、バンパーを詰めて全長を若干短くした、いわば“かなり日本向け”となるキャデラックを発売したことがあるが、売れ行きは芳しくなかった。日本での扱いやすさを追求したら、古参のアメリカ車ファンからソッポを向かれたともいわれた。

 実用性や日本市場の特性などを考えれば、日本仕様のXT5にも2リッター直4が積極的に導入されただろうが、XT4との差別化を考えればV6の搭載もそんなに違和感を覚えるものではない。ただ、アメリカでもメインユニットというよりは、オプション設定のようにも見える3.5リッターV6をあえて日本仕様として唯一搭載するあたりは、販売台数もそれほど多くはGMサイドも求めていないようなので、趣味性の高さやアメリカ車ファンへ向けた設定にしてあるのだなあと、筆者は強く感じた。

 筆者が20代のころ、友人と南カリフォルニアを旅行に行ったときに、安く借りられるとして、シルバーのキャデラック・ドゥビルという大型セダンを借りて砂漠地域などをドライブして楽しんだことがある。当時すでにFFとなっていたのは残念だが、4.6リッターV8OHVエンジンを搭載し、内装色はオール“えんじ色”であった。

 往時のアメリカ車やクラウンの、“船を漕ぐような”独特のソフトな乗り味に感動しながらフリーウェイを流していると、Tシャツにジーンズ姿の若いアジア人が新車のキャデラックを運転しているので、通り過ぎるクルマのドライバー(白人ばかり)は驚いた顔でこちらを見ていた。おそらく、アジア系自動車窃盗団のメンバーと勘違いされていたようだ。XT5のステアリングを握っていたら、当時の、そんなドゥビルの思い出を鮮明に思い出すことができた。

 アメリカ車は、“日米自動車摩擦”ともいわれた1980年代に、製造品質があまり良くない様子や(当時はひどかったけど今は改善されている)、大排気量で燃費も悪いなどといったネガティブな部分を、“世界一ともいわれる優れた日本車(当時は)”と比較するテレビ番組が多く放映され、そのころのイメージがいまもなお引きずられる形で“アメリカ車はよくない”と、いまでも日本では広く思われてしまっている。

 しかし、3.5リッターV6には気筒休止システムが採用されているし、燃費性能も実用レベルでは日本の同クラスユニットよりも優れているのではないかとの話もある。

 XT5を運転していて随所から、「やっぱりアメリカ車だなあ」と感じる部分があるところを見ると、いまどきの日本車よりはキャデラックというブランドパワーもあるが、丁寧なクルマづくりが行われている印象を強く受けた。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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