ユーザーが欲しいと思うクルマを具現化することも大事
しかしユーザーは、理屈でクルマを買うわけではない。車種によっては外観の見栄え、車内からの見晴らしといった感覚的な要素も重視する。トヨタはそこを優先してアルファードを設計した。
つまり良いクルマ作りではなく、売れるクルマ作りだ。そしてたくさん売れるクルマは、多くのユーザーが使う以上、良いクルマと判断される。トヨタはこのロジックの見極めと、開発手法が昔から超絶的に上手だ。そのために1960年代の中盤以降、トヨタが一貫して国内販売の1位であり続けている。
そしてトヨタは、商品開発の巧さを軸に、販売からメンテナンスまでつねに「売れること」を重視する。上手な商品開発でアルファードのように人気を高め、それを中古車価格の高値安定に結び付け、ユーザーが数年後に売却する時の金額も上昇させた。この好循環を作り出し、好調な販売に結び付けている。
トヨタは商品力よりも販売力が強いといった見方もされるが、そんなことはない。肝心の商品に魅力がなければ、売れ行きは伸ばせない。誤解されやすいのは優れた商品力の意味で、必ずしも走行性能が高いとは限らない。アルファードを例に述べた通り、デザインや情緒的な面まで含めたユーザーの本音に訴えるクルマ作りが優れている。
このほか販売店舗数も見逃せない。トヨタは4系列を合計すると約4600店舗だ。日産の2100店舗、ホンダの2150店舗に比べると、2倍以上に達する。どこでも購入できて綿密なサービスを受けられる強力な販売網も人気の秘訣だ。これも前述の好循環によって築かれた。