異常気象や大量生産しにくいことも供給不足に拍車をかけた
2) 自動車用は作るのが手間
飛行機もそうだが、自動車は命を預かるもの。安かろう悪かろうではダメで、精度や不具合の有無などの確認もあったりと、手間がかかる。つまりすぐに大量生産ができないということになる。
3) 米中対立
アメリカが中国の半導体メーカーに制裁をかけたことで品不足となりつつ、そのぶん、台湾のメーカーに注文が集中。もちろん集中しても、すぐに大量生産できるわけではない。また、台湾のメーカーも既存の顧客分(ゲーム機やスマホなど)があるので、そちらを優先するのは当然のこと。ちなみに自動車用は買い叩かれて儲からないので、気分的にも後回しになっているという説もある。
4)アメリカの異常気象
操業を停止した工場を見ると、アメリカが多いことがわかる。テキサスやテネシー、ミシシッピなどの南部や中西部を2月に大寒波が襲った。季節外れ以前に、そもそも寒波に見舞われること自体が異常なエリアで、たとえばテキサスはもともと気温がマイナスには滅多にならないが、今回はマイナス10度ぐらいまで下がったというし、全米の約7割の場所で雪が降ったという報道もあった。ちなみに気象衛星が雪を雲と勘違いして誤作動したというほど。
これによって死者が出ているし、停電なども多発して工場も操業不能に。該当のエリアは日本メーカーも多く工場を構えているため、打撃を受けてしまった。さらに悪いことにサムソンなどの半導体工場があって、こちらも操業を一時停止したため、すでに見た半導体不足に追い打ちをかけてしまった。自動車メーカーとしてはダブルパンチだ。
以上、原因はシンプルにこれだけ。しばらくすると、増産体制もできて解消されるとされているが、自動車メーカーもそのうち増えてくるでは困ってしまう。半導体価格は車体価格高騰の要因にもなっているので、今後、争奪合戦の影響でさらに高くなる可能性もある。いずれにしても、コロナや異常気象などの外的要因に、意外にもろいことを露呈してしまったと言っていい。
この原稿を執筆完了した時点で飛び込んできたのが国内の半導体大手、ルネサスの茨城県にある主力工場で、火災が発生(2021年3月19日)。自動車向けの半導体を生産していて、半導体不足に拍車をかけることになっている。生産再開には1カ月程度かかるとのことで、影響はかなり大きいのは確かだ。