金属同士が直接触れる部分が少ないため慣らしの必要はない
エンジンの慣らし運転は、金属同士が直接触れる可能性のある部分があるため、はじめのうちは無理せず低めの回転を目安にゆっくり回して馴染ませるとよいといわれてきた。しかし今日では、エンジン製造における精度が高まり、生産後の工場出荷時に高回転まで回す検査もしているので、必ずしも慣らし運転しなくても大きな故障には至らないだろう。それでも、新車が納車されてすぐには、高回転まで一気に回すのではなく、徐々に回転を上げて使うようにするといった配慮をすれば、滑らかに高回転まで回し切れるエンジンに育っていくのではないか。
また、始動時の暖機運転についても、かつてほどする必要はないとされている。理由は、上記のように製造精度が高くなっていることと、使うエンジンオイルも化学合成油が増え、粘度が低くても十分な潤滑ができるようになってきているので、温度が上がりオイルが馴染むのを待つ必要性も下がっている。また、暖気中に排出ガス中の有害物質が多く排出されるのを予防するうえでも、触媒が素早く適正温度に上がるよう設計されているとともに、始動後早目に発進すれば、目的地までに消費する燃料使用量も減らせられることになる。
それでもエンジンを上手に利用するには、ある程度の配慮があると、よりよいのは事実だろう。
一方で、モーターは、エンジンのように金属部分が直接触れる可動部が少ない。回転子(ローター)を受け止める軸受けのベアリングくらいだろう。モーター内部は、エンジンのシリンダーとピストン(ピストンリング)のように直接触れる部分がなく、外側の固定子(ステーター)と回転子(ローター)は、磁石がもたらす磁力の影響により回転力を生み出すので、慣らしをしたり馴染ませたりする必要がないのである。
したがって、故障が少なく、長持ちし、車体が廃車となってもモーターはまだ使えるとさえいわれるのはそのためだ。当然ながら、接触部分がないのでオイルを使わず、オイル交換もない。保守・管理の手間が少ないといわれるのも、そのためだ。
誰もが安心して、面倒なく利用できるのがモーターの特徴だ。逆に、専門的な知識や経験を必要としない物足りなさはあるかもしれない。だが、逆に、誰もが自在に使えるモーターをどのように活用するか、そこに知恵を絞り、差別化していく楽しみはある。