軽であることを忘れさせてくれるほどの快適感をもつモデルも
2)ホンダN-BOX/スズキ・スペーシア
では、タントと同じスーパーハイト系のホンダN-BOXやスズキ・スペーシアはどうかと言えば、フロアからシート座面までの高さはN-BOX355mm、スペーシア360mmと同等。しかし、シート座面が比較的水平に近く、かけ心地の良さではタントにややリードされてしまうのだ。
ただし、すでに説明した、シートからの立ち上がり性では、センタータンクレイアウトによって、後席スライドが最後端位置でも足が引ける、後席下に燃料タンクのないN-BOXが優位に立つ。もっとも、タント、スペーシアも、後席スライド機構を使って、後席を前に出せば、足を引くことができるから心配はいらない。
3)ホンダN-WGN
そうそう、スーパーハイト系でなくても、後席の乗り心地、かけ心地に優れた軽自動車がある。それはホンダN-WGN。新型N-WGNのシートは基本的にN-BOXのフレームを使っているのだが、前席はもちろん、後席のかけ心地もN-BOX以上に抜群で、ドーンと腰を下ろしても底づき感がなく、ゆったりとしたソファ的なかけ心地を実現している。
その理由は、N-BOXに対してシート表皮の伸び率を25%高め、ウレタンの硬度を5%ダウンさせ、なおかつ、座ったときに硬く感じるフレームを人から遠ざける配置にしてあるからである。N-WGNの後席に座っていると、ハイトワゴン系ならではの空間の広さとともに、軽自動車の後席に座っていることを忘れさせてくれるほどの快適感が得られるのである。
4)スズキ・ハスラー
加えて、スズキ・ハスラーの乗り心地は、もはや軽自動車の域を超えたものと言って良く、荒れた路面、段差でもフラットライドに終始。スタッドレスタイヤを履いて軽井沢を往復したこともあるけれど、あまりの乗り心地の良さから、まったく疲れなかった記憶がある。それは後席も同様で、シートの良し悪しというより、基本的な乗り心地の良さが功を奏していると言っていい。
ちなみに、ここで紹介した、後席の乗り心地、かけ心地のいい軽自動車台の後席居住空間についても、紹介しておきたい。身長172cmの筆者のドライビングポジション背後の後席で、シートスライドを最後端位置にセットして座ってみると……。
タントは頭上に270mm、膝周りに355mmものスペースがある。N-BOXは同250mm、450mm。スペーシアは同270mm、340mm、N-WGN同195mm、320mm、ハスラー同160mm、300mmと、ゆとり感が強調されるひざまわり空間ではN-BOXが圧倒する。
また、後席の着座感の良さにかかわるシート座面の長さは、タント500mm、N-BOXとスペーシアが480mm。同じスーパーハイト系の日産ルークスは430mmと極端に短い。ハスラーは490mmである。
というわけで、総合的にはタント、N-WGN、ハスラーなどが、後席の乗り心地、かけ心地の面で、軽自動車としてとくに優れていると言えそうだ(乗降性を除く)。もっとも、走行性能、先進運転支援機能、後席の空調環境、シートアレンジ性などを加味すれば、別の選択肢もアリ、ということになるんですけどね……。