大ヒットした「ワゴンR」の名称も思いつきで生まれた
もうひとつ、鈴木 修さんが商品企画に関わった有名な例が、軽自動車の世界を大きくかけたハイトワゴン「ワゴンR」の誕生だ。
FFベースの1BOXという商品企画で、もともとは「ジップ」という名前で開発が進んでいたモデルだったが、どうにもジップという車名ではピンと来ないということで、最後の最後になって「セダンもあるけどワゴンもある。ワゴンあーる(R)でいいじゃないか」と思いついたという逸話もまた鈴木 修さんの勘ピューターを象徴するエピソードとして知られている。そして、ワゴンRという名前だったからこそ、あそこまで時代を変える大ヒット作になったのは間違いない。
また、当時の話で思い出すのはワゴンRの支持を敏感に感じ取って、生産計画を変更していたことだ。自動車メーカーは新車発表時、メディア向けに事前レクチャーをすることがあるが、ワゴンRの最初のレクチャーでは月販3000台程度というニュアンスだった。しかし、メディアや販売店から大ヒットするという反応を得るや、最終的には5000台の目標となった。このあたり、鈴木 修さんが身上としていたトップダウンによる素早い決断を感じさせられたものだ。
『トップダウン・イズ・コストダウン』とは鈴木 修さんがGMの経営陣に向かって、スピード感のある決断を求めて伝えた言葉して知られる名言だが、それはまさしく鈴木 修さんの経営者としての生き様を示している。
<参考文献>
俺は、中小企業のおやじ 鈴木 修・著(日本経済新聞社)