生き残るのは意外な業種! クルマの電動化で存続の危機を迎えるサプライヤーとは (1/2ページ)

もっとも影響を受けるのはエンジン関連のサプライヤー

 自動車業界は100年に一度の大変革期といわれている。その変革を象徴しているのがクルマの電動化だ。欧州では新車販売の1/4程度がプラグイン化(電気自動車、プラグインハイブリッド)となっているほどで、また2030年あたりを目途にエンジン車の発売を禁じるといった政策を発表している国や地域は世界中で増えている。自動車の動力源としてのエンジンは消えゆく運命にあるといえるのだ。

 では、エンジンがなくなり、すべてのクルマが電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)といったゼロエミッション車になったときに、自動車の産業構造はどのように変わってしまうのだろうか。

 よく言われるのは、これまでの産業構造が変わることで、一部のサプライヤー(部品製造業)が大打撃を受けるということだ。そうなると企業の存続、雇用の維持が難しくなり、政府としてはなんらかの対策を考える必要が出てくる。

 具体的に電動化によってもっとも影響を受けるのはエンジン関連のサプライヤーであろう。エンジンに使われている部品は数多く、それだけすそ野も広いからだ。ちょっと考えただけでも、ピストン、ピストンリング、インジェクター、スパークプラグ、クランクシャフト、メタル類、シール類、オイルポンプ、ジェネレーターなどなど多くの部品が電動化によって不要になり、その専業メーカーに厳しい未来が待っているのは間違いない。

 ティア1と呼ばれるメーカーと直接取引をしているレベルのサプライヤーになると、なにか一つの部品に特化しているというわけではなく、様々なパーツを作っているので、エンジン車がなくなったからといって、企業が傾くというわけではない。とくに日本のデンソーやドイツのボッシュなどメガ・サプライヤーと呼ばれる大企業についてはエンジンに使うパーツを作りつつ、電動化に欠かせないインバーターや燃料電池用の部品を製造していたりする。むしろ、こうしたメガ・サプライヤーが次のトレンドを提案している部分もあるほどだ。

 とはいえ、ティア2、ティア3と呼ばれる階層が下の企業になると、エンジンパーツに特化しているケースもある。そうした企業はこのままでは生き残れないのは自明だ。時代に合わせて業態や製造部品を変えるのか、このまま設備投資をせずに受注減に合わせて会社を畳むのか。そうした経営判断は難しいところだが、各企業が考えるほかない。

 また、エンジン車がなくなるということはガソリンや軽油のニーズが大幅に減るという意味であり、エンジンオイルも不要になるということだ。つまり精油業界にも大きな影響はある。電気自動車であっても駆動系に潤滑油は使っているが、その交換サイクルは長くなり、消費量が圧倒的に減ることは間違いない。

 そもそも燃料の需要が減るということは原油の採掘量も減るというわけであり、その状況下において油脂類だけ需要が増えるというのはバランスを崩す。オイル業界にとっては大打撃だろうが、産油量とのバランスにおいては電動化で油脂類の需要が減ることは結果オーライといえるだろう。

 余談だが、精油される原油が減るということはプラスチック製品などの供給にも課題が出てくる可能性がある。レジ袋などの有料化(需要減)は、その意味では未来に沿った政策といえるのかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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