ライドシェアリングは日本の風土や社会実情にマッチしにくい
では、なぜ日本で欧米型のライドシェアリングは普及しないのか?
本件については、各方面からさまざまな意見があることを筆者は十分承知している。そのうえで、話を進める。
ライドシェアリングを「いわゆる白タク」という表現をすることが多い。国による各種の有識者会議でも、そう表現されるため、政治家や企業経営者の間でも「いわゆる白タク」という言葉を使う場合が多い。つまり、日本では非合法ということだ。
一方で、日本で合法なのは自家用有償旅客運送というものがある。福祉への対応、または中山間地域などでの、いわゆる交通空白地域に対する特別な措置のことだ。
実際、筆者は福井県永平寺町エボルーション大使として、町の交通政策に深く関与しており、2019年秋から社会実証をおこない、2020年秋から実運用を始めたオンデマンド方式の自家用有償旅客運送である「近助タクシー」に関して、経済産業省、国土交通省、警察庁、福井県などとさまざまな協議を行ってきた。
そうしたなかで、欧米型のライドシェアリングの導入については、国土交通省が通達を出すことで一部のベンチャー企業が事業化を目指している事案も含めて、さまざまな議論があったのは事実だ。
このような経緯のなかで「なぜ、日本では……?」という疑問・質問に対して、社会変革の現場にいる当事者としては「日本の風土と、社会実情にマッチしにくい」と思う。
むろん、今後も普及する可能性がまったくない、とは断言しない。
ただし、単なる利便性や事業性の追求ではなく、人々の継続的な生活の維持と発展を第一に考え、交通については適材適所で考えることが重要だと思う。