サイバーセキュリティへの対策は?
スマホのデジタルキー化で、多くのユーザーが危惧するのは、サイバーセキュリティに対するリスクだろう。2010年代中盤には、アメリカのハッカーがプリウスやジープチェロキーの車内システムを乗っ取り、外部からまるでラジコンのようにコントロールする様子が、世界的なハッカーの祭典で披露されたことを覚えている人も多いだろう。
この場合のハッキングは、車載インフォテインメントと呼ばれる、インフォメーションとエンターテインメントを融合させた新規導入システムの脆弱性をつく手法だった。
この大事件を契機に、コネクテッドカーに対するサイバーセキュリティ対策は大きく進んだとはいえ「結局、ハッキングやサイバーセキュリティへの対応は、ハッカーとメーカーの“いたちごっこ”」と指摘する業界関係者がほとんどだ。そのため、スマホのデジタルキーについても、ハッキングが絶対に発生しないと言い切れる自動車エンジニアはいないはずだ。
それでも、デジタルキーが量産されるようになったのは、仮にスマホの形状が今後変化していっても、スマホが個人の情報端末として定着することが明らかだと思うエンジニアやメーカー経営者が多いからだと思う。その上で、サイバーセキュリティ対策は日進月歩で改善されることになる。現状で、デジタルキー対応車種が少ないのは、端的にコストだと思う。
また、筆者の知る限り、一部の自動車メーカーでは研究開発は当然行っているものの「ユーザーが現時点で、本当にそこまで望んでいるのだろうか?」と、デジタルキー採用に対して慎重な姿勢を示す場合もある。はてさて、いまから10年先の2020年代、デジタルキーは軽自動車の標準装備になっているのだろうか?