「偉人」「カリスマ」なんて言葉すらぬるい! 勇退を決めた91歳の「鈴木修会長」の圧倒的な人間力 (2/2ページ)

他社との提携やインド進出も最前線に立っておこなっていた

 そして海外との提携でも先頭に立って「GMは鯨、スズキは蚊。メダカだと食べられてしまうが、蚊なら飛べるので呑み込まれない」と大胆。VWと提携して、すぐに解消となったときも「離婚した相手と再婚することはなし」、「過去については『沈黙は金なり』ということで、コメントは差し控える」と鈴木流で対応した。

 提携に関しては最終的にトヨタと手を結んだのはご存じのとおり。「ついに軍門に下った」的な報道もあったが、オイルショックのときにはトヨタを通じてダイハツのエンジンを融通してもらったり、さらに昔にはトヨタにお金を借りに行ったことも。さらに修氏の義父となる2代目社長の俊三氏からは「なにかあったらトヨタさんに頼みなさい」と言われているほどなので、手を結ぶ相手としては当然といえば当然だった。

 そして功績のひとつ、インド進出も「自動車メーカーのない国に出れば一番になれる」と、独自の視点でおこないつつも「勢いに任せて突っ走ったらうまくいった」とのこと。ただインド側がスズキを提携先に決めたのは、最初から最後までトップ自らが対応したのはスズキだけだったからという当時の関係者の話もあるという。

 自身の人生観について「有給休暇は死んでから嫌というほどとれるのですから」、「俺は中小企業のおやじ」、「生涯現役」とあくまでもバイタリティーあふれつつ、「俺はサラリーマン社長じゃないから花道はない。だから、自分の任期を考えて経営してきたわけじゃない」とも。この馬力がありつつ、身を引くときはさっと引く、気持ちよさ。ちなみに相談役として挑戦し続けるというから、今後もその活躍に注目だ。

 代表権はないので、日本の自動車産業のために、なにかやってくれると面白いのだが、今まで突っ走りすぎてきただけに、ゆっくりとしてもらいたいとも思う。最後の会見で「仕事は生きがいだ。皆さんも仕事を続けてください。ありがとう。バイバイ」と去っていったのには涙。もうこんな馬力のある、ユーモアあふれる経営者は出てこないのかもしれない。楽しいクルマなど、いろいろとありがとうございました。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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フィアット500(ヌウォーバ)/フィアット・プント/その他、バイク6台
趣味
レストア、鉄道模型(9mmナロー)、パンクロック観賞
好きな有名人
遠藤ミチロウ、岡江久美子

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