経済的不安が叫ばれるいま2台の高額車が絶好調の不思議! トヨタ・アルファード&ハリアーが売れるワケ (2/2ページ)

400〜500万円台で上質感を追求するとハリアーにたどり着く

 次はハリアーについて販売店に尋ねた。「ハリアーは従来型も人気で、新型に乗り替えるお客さまが多い。クラウンからハリアーへの乗り替えも目立つ。マツダCX-5も含めて、さまざまなSUVのお客さまがハリアーに興味を持たれている。予想以上の人気だから納期も長い。ノーマルエンジンでも3〜5カ月、ハイブリッドで納期の遅いグレードだと、3月に契約をいただいても納車されるのは11月だ」。

 前述のとおりハリアーは、2021年1月&2月には、1カ月当たり9000台前後を登録した。2020年に登場したときの販売目標は1カ月当たり3100台だから、確かに予想以上の人気だ。全店が全車を扱う体制になった影響もあり、売れ行きを伸ばした。

 そしてアルファードと同じくハリアーも、上質なSUVを求めるユーザーには唯一無二の存在だ。ハリアーの売れ筋価格帯は350〜450万円に達するが、このなかで該当するSUVの主力車種は、ハリアー以外ではマツダCX-8、ホンダCR-V、レクサスではもっともコンパクトなUXになる。

 CX-8は車内が広く内装の造りも丁寧だが、フロントマスクなどの外観はCX-5に近い。開発者は「CX-8はLサイズのボディを含めてコストが高い。フロントマスクはこれ以上豪華にできなかった」という。そのために巧みに高価格車の雰囲気を盛り上げるハリアーに比べると、CX-8は物足りない印象を受ける。

 CR-Vは内外装ともに不満があり、インパネのステッチも模造品だ。コンパクトな先代ヴェゼルでも、本物の糸を使うステッチを採用したから、CR-Vはハリアーに比べると大幅に見劣りする。

 以上のように400〜500万円で購入可能なミニバンやSUVから、上質で魅力的な車種を探すと、選択肢は意外なほど少ない。いわば必然的に、アルファードとハリアーに絞られてしまう。そこにトヨタの全店/全車販売も加わって超絶的な売れ行きに至った。

 ちなみにメルセデス・ベンツが今でも好調に売れる理由もそこにある。日本車の場合、400万円以下には魅力的な買い得車がそろうが、この価格帯を超えると選択肢が一気に減る。好調に売れる日本車の上限は実質的にアルファードとハリアーになってしまう。その結果、需要が集中して、1カ月当たり1万台前後を売る人気車になったのだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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