自社サービスとの接触時間を伸ばすためだった
もうひとつ、Googleのように自社サービスのすべてを広告媒体として考えると、ユーザーがサービスを利用する機会を増やすことは、自社との接触時間を伸ばすことになる。前述したように、自社の他アプリとのシームレスな連携をすることも、そうした囲い込みにつながる部分で、媒体力強化としては十分に意味があるといえる。
じつはGoogleが自律運転を開発しているのも、そうした理由。運転から解放されれば、ドライバーがスマートフォンを使えるようになり、自社サービスの利用時間が伸びる。そうした未来は、彼らにとってメリットが大きく、自律走行できる技術を開発するモチベーションになっているわけだ。
これはクルマ社会であるアメリカだからこそ生まれた考え方といえるだろう。クルマは生活に欠かせないものだから、そのなかで過ごす時間も長い。そこで、どこまでユーザーとつながっていられるかは企業価値に直結するのである。
最近、日本でも流行り始めている音声SNS「Clubhouse」も、もともとは運転しながらリアルタイムなSNSコミュニケーションをとることを狙って生まれたサービスだという。運転中という、残された領域を奪うことができるサービスだからビジネス的にも注目されているのだ。
もっとも、Clubhouseを利用したことがあればわかるだろうが、運転しながら仲間の話を聞いたり、ときどき発言したりというのは、ドライビングの集中力という視点からは少々心配にも感じる。たしかに、ラジオを聞いていて、ときどきハンズフリーで会話をしていると考えれば許容範囲なのであろうが、安全第一であることを忘れずに利用してもらいたい。
というわけで、GoogleやYahoo!がナビアプリを無料で提供するには、彼らなりのメリットがあるからだ。ならば、車載カーナビは消えてしまうのかといえば、そうともいえない。いわゆるスマホナビは電波が届かない場所では地図データを得ることができず、まったく道案内できなくなることもあるからだ。
日産プロパイロット2.0やSUBARUアイサイトXといった高度な運転支援システムでは高精度マップが必須のため、専用地図データを搭載する必要もある。そうでなくともナビと連携した運転支援システムの制御は増えている。
はたしてメーカー製ナビVSナビアプリという図式になるのか、はたまた共存共栄する未来になるのか。いずれにしても、ユーザー利便性が増していくのは間違いない。