大気汚染の防止にも電気自動車は有効
またEVに搭載されるリチウムイオンバッテリーは、製造時のエネルギー消費が多いため、CO2排出量が増えるといわれている。それは事実だが、EVで使われるのはその容量の3分の1ほどでしかない。残りの3分の2は、EV後の再利用として定置型で再生可能エネルギーの蓄電などに活用することができる。その定置型として再利用するときは製造時のCO2排出はゼロとなる。
つまり、EVの製造時のCO2排出量として、リチウムイオンバッテリー製造でのCO2排出量をそのまま加算し、エンジン車などと比較したのでは、適正な試算とは言えないことになる。
なおかつリチウムイオンバッテリーのリサイクルは、まだ構築されていない。それであるのにLCAでは廃棄やリサイクルでのCO2排出量も試算に加えるとある。ならば、EVのLCAの根拠はどこにあるのか? 以上のような、不確かなウェル・トゥ・ホイールやLCAの評価をそのままEVに適用することは不自然だ。
EV導入の目的は、CO2だけではない。大気汚染防止もある。米国カリフォルニア州はもとより、英国ロンドンやフランスのパリなどは、中国の北京並みの大気汚染に苦しんだ。私はロサンゼルスで地上に降りたスモッグのなかに佇んだことがある。それは異常な光景であり、恐怖でもあった。
それを解消するには、排出ガスゼロでなければならない。ディーゼルターボ車が増えた日本でも、東京には光化学スモッグ注意報が出されるようになっている。やはり排出ガスゼロのEVしか、本当の意味での電動化や、環境保全にはならない。
ウェル・トゥ・ホイールやLCAでのCO2評価が、いかに一面的であるかがわかる。考慮する必要はある。しかし、未来を描こうとするなら、もっと先の社会や暮らしを視野に考えなければならない。