乗る限りは特殊なことはない上質で静かな「高級車」
それが証拠に、コクピットドリルに特殊なことはない。イグニッションを入れ、セレクターレバーを「D」にエンゲージさせればそれだけで走る。走りそのものも洗練されている。乗り心地もよく、何にもまして静粛性の高さには腰を抜かすほど。
水素と酸素の化学反応で得た電力で走るわけだから、つまり走りはEVと同様に低速から力強い。それでいてボディの遮音性は高く、高級車らしい佇まいである。
水素燃料自動車だからミライに乗るのではなく、高級車としてのミライを手にしたらたまたま水素燃料自動車だった……というように、そもそもクルマとして完成されているのである。
大きなバッテリーや水素タンクを積まねばならないから、スペースには制約がある。後席や荷室が広々しているとは思えないが、高級車としての資質は高い。それでいて、710万円からというから大勉強である。補助金で補うことを考えれば、あるいは世界のどの高級車よりコスパに優れていると思えるのだ。
ちなみにミライには、大気清浄機が内蔵されている。漂うPM2.5や粉塵を吸って走るのである。走行中に一切のCO2を排出しないばかりか、走れば走るほど空気が浄化されていく。走る空気清浄器でもあるのだ。
各国の政治家が唱えるほど、EVが脱炭素化の救世主だとは思えないが、こんな夢のようなクルマがデビューしたのも脱炭素化の流れだとしたら、CO2削減に躍起になるこの風潮も悪くはない。