軽自動車にも伝統の自然吸気・高回転エンジンが存在!
2)VTECエンジン
さて、1990年代といえば、ホンダの自然吸気・高回転エンジンが一世を風靡していた。『VTEC』と名付けられた可変バルブリフト&タイミングシステムが、高回転カムに切り替わると一気にエンジン回転を上昇させる様は、いまも伝説となっている。その究極形といえるのが2シータースポーツカーS2000に搭載されたF20Cエンジンだろう。許容回転は9000rpmという市販四輪車としては異例の高回転まで味わえるユニットに仕上がっていた。
しかしながら排ガス規制が厳しくなるなかで、ホンダの高回転VTECエンジンはどんどんと消えていく。現行シビック・タイプRにしてもVTECターボエンジンとなり、最高出力の発生回転数は6500rpmとかつてのホンダの感覚でいえばファミリーカーのような低回転エンジンとなっている。もちろん、最高出力320馬力の刺激はとてつもないレベルだが。
では、ホンダから自然吸気のVTECエンジンは消えてしまったのか?
じつは軽自動車に生き残っている。N-BOX、N-WGN、N-ONEの各モデルに搭載される自然吸気の「S07B」型エンジンにはVTECヘッドが与えられ、その最高出力発生回転数は7300rpm。たしかに1990~2000年代に市販された一連のタイプRシリーズと比べれば物足りないが、2020年代の基準でいえば十分に高回転が楽しめるVETCエンジンだ。
惜しむらくは、このVTECエンジンとMTの組み合わせが存在しないこと。S660やN-ONEの6MTはターボエンジンとの組み合わせであるし、軽商用車N-VANの6MT車はVTECレスのエンジンとなっているのだった。
3)ロータリーエンジン
メーカーのアイデンティティをエンジンが表現するといえば、忘れるわけにはいかないのが、マツダのRE(ロータリーエンジン)だろう。
かつてル・マン24時間耐久を制したREは、市販車としてはRX-8を最後に消滅している。もはや、新車のREを味わうことは不可能……と思っていたが、さにあらず。
先日、電気自動車バージョンが登場したクーペSUVであるMX-30にはREを発電用エンジンとして搭載したレンジエクステンダーEV仕様も計画されていることが発表されている。これまでもRE復活の噂が流れては社会情勢によって立ち消えになったこともあり、実際に発売されるまでは復活! と断言することはできないが、マツダのアイデンティティであるREが公道に帰ってくる日を楽しみに待ちたいというファンも少なくないだろう。
ところで、REには水素を燃料として動かすというアイディアもあった。熱効率の面から燃料電池に劣る水素REだが、水素純度へのロバスト性や製造コストでは有利な面もある。カーボンニュートラルによって水素社会が進むとすれば、REが求められるようになる可能性もあり、そうなるとREをレンジエクステンダーEVの発電機として使うというメカニズムは時代に合致したパワートレインとして再評価されるかもしれない。