若い乗客を恐れるドライバーも
酔った勢いでトラブルになるケースが圧倒的に多く、そのような場合はたいてい翌朝に加害者の親族が暴行を受けた乗務員の所属する営業所にお詫びにくる(もみ消しにくる)とのことだが、タクシー事業者の多くは、社会的ステイタスの高いひとが乗務員を見下して暴行に及んだりすることは到底許容できないとして、刑事告訴を行い、どんなことがあっても取り下げは行なわないとしているところも多いと聞いたことがある。
あるタクシー乗務員経験者は、「私は若い女性が苦手でした。昼間に狭い道路を安全速度で走っていると、見た感じはどこにでもいる清楚な若い女性だったのですが、『おっせーなー、もっと速くいけよ』と言ったあと舌打ちされました。これと似たようなケースは結構ありましたね。もちろん相手もそのような態度を取っても大丈夫だと思う乗務員かは見ていたようですけどね」とのことであった。
また、最近結構多く聞くのは“いまどきの若者”に対する不満である。「いくら乗客でも、あそこまで横柄な態度をとられるいわれはない」とか、いまどきの若者は前述した世間的には“成功したひと”や、“ステイタスの高いひと”が酔った勢いで本音を出してしまうというパターンに近い態度をとるようである。マスクもしないで平気で乗り込もうとしてきたりもするので、新型コロナウイルス感染予防の観点からも、若者がよく乗ってきそうな場所は“回送表示”して素通りすることもあるとも聞いたことがある。
タクシーという業種は、公共交通の一翼を担っている。ニューヨークでは医療従事者と同じタイミングで、新型コロナウイルスのワクチン接種が優先されるほどであり、いわゆるエッセンシャルワーカーのひとりでもある。「感謝して乗れ!」とまではいわないが、いわれのない偏見を持ち、時にそれをタクシー乗務員に言動や行動で示すことだけはくれぐれもやめていただきたい。