形状や縫製、張り方に特殊な技術が必要なためコストがかかる
クルマのシートの素材は、大きく分けて布とレザーがあるのはご存じだろう。布にも魅力はあるものの、レザーシートというと高級や上質と言ったイメージがあるし、プレミアムモデルでは、内張りにも使われていることがある。また国産車でも昔からあるが、設定されているのはもちろん高級車および上級グレードで、「高いクルマの証」として憧れに近いものがある。
そもそもレザーシートの魅力はどこにあるのだろうか? まずはコストが高いということで、それを装備できるからプレミアムモデルということにつながる。布も織る手間などはあるが、レザーの場合は1頭の牛からたくさん取れるわけではなく、放牧時のキズがなかったり、柔らかさなどの質にこだわると1台分にもならないことがある。専門ブランドもあって、イギリスならコノリー、アメリカだとナッパなどがお馴染みだ。
さらにレザーの場合、柔らかくして風合いを出すために、なめさなくはならない。ここにも専門の技術があって、高級なものは丹念に時間をかけて行なわれるし、安いものはそれなりというのが実際のところだ。そして、なめされたものに塗装をして仕上げられ、シートの形にしていくのだが、ここでも布のように自由度があまりないので、形状や縫製、張り方に特殊な技術が必要になる。ザッと見ただけでも、コストがかなりかかることがわかるだろう。
しっとりとした座り心地など、メリットは雰囲気も含めて多いが、デメリットもある。まず冬場は冷たいこと。シートヒーターを装備しているモデルが多いのはこのため。そのほか、最近はあまりそういうことはなくなってきたが、なめし方や表面の塗装方法によってはツルツルしていて、コーナーで体が横滑りしてしまうこともある。
最後に、耐久性が問題で、これも品質などによるが、硬くなったり、表面が割れてきたりするし、ひどい場合はハゲて毛羽立ったみたいになることもある。よく、人の肌と同じようにレザーは油分を補ってやるとしっとりとした風合いが長続きすると言われるが、先にも紹介したように表面に塗装して作られているので、それほど効果は期待できない。
カサカサや色はげが出てきたら、シートリペアのプロに頼んで再塗装や張り替えを頼むしかなく、場合によっては布よりも手間がかかることもある。手間をかけてやる必要があるというのも高級車向きと言っていいかもしれない。ただ、最近は日本車でも採用が進んでいて、気軽に楽しめるようになってきているのは喜ばしいことだろう。