世界平均はけっこう多い、それとも少ない?
モータリゼーション・レート(自動車普及率)という数値がある。日本の自動車工業会など、世界の国や地域の自動車関連団体でつくる国際自動車工業連合会は数年に一度のペースで公開している。いったい何台なのか、気になるところだが……。直近は2015年のデータになるが、それによると世界平均は1000世帯当たり182台という結果が報告されている。国や地域でみると、もっとも多いのがアメリカで821台。次いで、ニュージーランドが819台である。
大きな括りで見ると、欧州主要28カ国が581台、また日本は統計上、韓国と一緒になって表示されており555台だ。また、世界最大の自動車製造・販売国である中国は118台と少ない。中国の経済発展が本格化したのは2000年代に入ってからであり、累積販売台数としてはまだ伸びシロがあるということだろう。自動車販売数で世界第二位のアメリカと比べて、中国の自動車普及率は約7分の1に留まっている。
つまり、中国の現在の年間自動車販売台数が3000万台弱程度で推移していることから、単純に考えて中国は1億台市場の可能性もあることになる。ただし、アメリカと中国では、住居環境の違いはもちろんのこと、税金体系など所有コストにも差があるため、こうした単純計算は成り立たないかもしれない。
自動車普及率を示す図には、別の観点での数値が出ている。それは、この調査の10年前、2005年との増加割合だ。これについては、国別というより地球上の大きな地域で分類されている。
141%増と大きく伸びたのが、日本と韓国を除くアジアとオセアニアと中近東を含めた地域。スポーツ競技などでアジアという括りになることがある地域だ。当然、このなかでは中国の影響が極めて強い。また、東南アジアではベトナムやインドネシアなど人口が多い国の伸び率も高いはずだ。
以下、伸び率が大きいのが、南米と中米で60%増、ロシアやその周辺諸国が59%増、アフリカが35%増と続く。一方で、北米は6%増、欧州主要国が9%増、そして韓国と日本が7%増という微増に留まった。
このように、先進国での自動車所有率の伸びが鈍化する一方で、2000年代以降に経済成長が本格化した、いわゆるBRICs(ブリックス:ブラジル・ロシア・インド・中国。または、南アフリカを含む場合もある)での自動車需要の高まりが、数値として明確になったといえる。
今後、日本での自動車保有率はどうなるのか? 少子高齢化、高齢ドライバーの免許返納による自動車所有の取りやめ、また核家族化による世帯数の増加など、さまざまな社会変化によって、自動車保有率が変化していく。また、日本全国一律ではなく、地方と都市部での自動車保有率の差も、さらに広がっていくのかもしれない。