若者が8人乗りの軽自動車で起こした事故! 運転技量以前に「事故って」当たり前の状況とは (2/2ページ)

想定を超える重量増は安全走行を阻害する

 エンジン出力を55馬力とした場合、8人乗車の場合パワーウエイトレシオは24.5kg/馬力となり、相当緩慢な加速性能となるが、問題は、曲がると止まるの2要素だ。曲がる、つまり遠心力、止まる、つまり制動力の問題だが、ともに質量に比例、速度の2乗に比例して大きくなるため、想定車重よりはるかに重くなった車両では、曲がらない、止まらないと動きとなってしまう。

 とくに、旋回運動に対しては、重荷重によってサスペンションが縮んだ状態となり、伸び縮みによって荷重を支えるサスペンション本来の働きができなくなり、さらに慣性力が格段に大きくなることで、簡単に転倒しやすいというリスクまで負ってしまう。

 問題は、重量の増減で変化するクルマの動きを、ドライバーが経験値として対応できるか、否かにある。重量とハンドリングの関係は、たとえばセダン型乗用車でもはっきり体感することができる。前2席乗車のときと後席にふたり追加した状態では、旋回特性や制動特性に大きな違いが出てくることは、経験を積んだドライバーなら本能的に理解できる問題だ。

 許される話ではないが、経験値が豊富なドライバーなら、8名乗車で走る際は、本能的に速度を抑えた運転となるだろう。通常の乗車定員の場合と同じ速度で走ってしまうと、曲がれない、止まれないことを、身を以て知っているからだ。しかし、この経験がないと、なんとか走ることはできても、ステアリングを回した場合、ブレーキを踏んだ場合、曲がれず、止まれず、コースアウトや転倒、衝突といった事態に結び付くことなる。

 経験値のあるなしで、過乗車の例を説明したが、問題の根底は、車両重量増という物理特性にあることは言うまでもない。わずか10kg〜20kgの車重変化でも、走行タイムに差が生じるレーシングカーの例を考えれば、軽自動車で大人4人分、250kgの車重変化が生じることは、いかに重大事であるか分かるだろう。自動車は、物理限界を超えて走ることはできないのである。


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