激動の時代に活躍するチャレンジャーとしておおいに期待したい
三部氏が考えるホンダらしさとは、大きなテーマに対してチャレンジする姿勢だという。激動の時代において、ホンダが真の意味で存在を期待される企業としてあり続けるのは相当ハードルが高いのは間違いない。そのハードルを『乗り越えるために、これを乗り越えるために、ホンダ全体で大きな転換とスピードが求められる』という決意も表明した。
さらに、『ホンダが描く新たな価値を早期に実現するために、必要とあれば外部の知見の活用、アライアンスの検討を躊躇なく決断、実行していきたい』とも発言している。すでに燃料電池、電気自動車、自動運転領域においてゼネラルモーターズ(GM)と提携をしているホンダだが、そうした関係をより深くしていくという意思があるとも感じられる。
また、電動化とエンジンの関係について、電動化がメインストリームになるのは間違いないとしながらも、商品、調達、生産、販売を同時に進めていくことでEVの事業性が成立するため、インフラとのタイミングも合わないとうまくいかないと考えているという。
一方で、エンジンの将来については『エンジンはなくなるとは思っていない』と断言。バイオ燃料などを利用することで、内燃機関のカーボンニュートラルも実現可能と考えているという。
三部氏がエンジニア時代の思い出として披露した2つのエピソードがある。
ひとつは、クリーンエンジン開発を担当していたときのエピソード。年を追うごとに排ガス規制が厳しくなる中で、エンジンが吸った空気よりも吐き出した空気のほうがきれいになったことがあった。その数字を見てひとり感慨にふけったという。
もうひとつが、GMにV6エンジンを供給するプロジェクトに参画しているときのこと。ホンダのエンジニアでは技術的にできるかどうかを基準としていたが、GM側のエンジニアは、資源の埋蔵量・採掘能力からから材料の使用量を決めるという判断に驚いたことがあったという。
これは単なる思い出話ではなく、三部氏の考えるホンダの行くべき道を示していると考えるべきだろう。
100年に一度といわれる自動車変革の時代、内製化にこだわるのではなくスピード感を最重視して判断していきたいとも抱負を語った三部氏は、自分自身を分析して『激動の時代に向いているタイプだと自負している。プレッシャーに強いタイプ。逆に、安定した時代ではヤル気がでないタイプで、この時代にホンダをリードすることにやりがいを感じている』と語った。
ホンダの新しいリーダーとしての三部敏宏氏におおいに期待したい。
なお、ホンダは2021年6月より指名委員会等設置会社へ移行することも同時に発表している。新体制に伴い、相談役などの役職が廃止されることもあり、八郷氏は6月で退任するということだ。