まるでホンダCVCCの再生のようだ
ホンダが1972年に発表した、世界ではじめてマスキー法をクリアしたクリーンエア エンジン、CVCC(複合渦流調速燃焼)も、副燃焼室式だったのは覚えているだろうか?
その後、触媒の技術の向上で、しばし表舞台から消えていた技術だが、2014年にF1のパワーユニットが1.6リッターV6ハイブリッドターボエンジンになった際、メルセデスAMGがプレチャンバを採用。その後、フェラーリ、ルノー、ホンダと、F1マシンのすべてのパワーユニットがプレチャンバを取り入れた。WECやスーパーGTのGT500のエンジン=NREにもプレチャンバの技術は投入されている。
量産車では、マセラティが2020年に発表した新型スポーツカー「MC20」に搭載した、3.0リッターV6エンジン=「ネットゥーノ」(ネプチューンの意)がプレチャンバを採用したと公表。
F1に燃料流量規制が導入され、限られた燃料からパワーを引き出すために各メーカーがこぞって採用したプレチャンバ。
600馬力で20km/Lの燃費をRB26エンジンで実現するための切り札になるテクノロジーといえるだろう。
余談だが、CVCCエンジンを搭載した初代シビックは、主燃焼室と副燃焼室にそれぞれ別のキャブレターを取り付けて、有害物質のHC(炭化水素)を減らすのに成功しているが、HKSは『RB26アドバンスドヘリテージ』で、「デュアルインジェクション」を採用。これは各気筒ごとではなく、各ポート(各吸気バルブ)に独立したインジェクターを設け、噴霧の微粒化を可能にし、エンジンレスポンスのアップと有害物質の排出を抑制するというもの。約50年前のCVCCの技術が、大幅にブラッシュアップされ、蘇ってきたようにも思えてくる。