働くクルマらしい特性を持ったオート三輪だった
「ハスラー」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは2014年にスズキからリリースされたクロスオーバーSUVタイプの軽自動車ではないだろうか。
よりコアなユーザーからしてみると、その名称はスズキがかつて製造していた2ストロークオフロードバイクのTSシリーズに付けられた愛称がハスラーだったこともご存知のことだろう。
しかし、日本で初めてハスラーの名前が付けられた乗り物は、バイクでもクロスオーバーSUVでもなく、オート三輪だったのである。
このオート三輪のハスラーは1961年に今やトラックやバスのメーカーとして知られる日野自動車がリリースしたもの。といっても日野が生産していたモデルではなく、三井精機工業が生産していた「ハンビー」というモデルをベースに外観などを変更して日野自動車の販売網で販売していたモデル、つまりOEM販売車だったのである。
このハスラーは285㏄の2サイクルエンジンを搭載し、最大積載量は350kgというもの。最大出力はわずか12馬力だったが、最大トルクを2400回転とかなり低い回転数で発生させており、働くクルマらしい特性を持っていた。
また、ハンビーでは初期のミゼットと同じようにバーハンドルだったものを、丸ハンドルにするなど多くのアップデートがなされていたのもハスラーの特徴と言える。
残念ながら、日本ではミゼットの牙城を崩すまでには至らなかったが、東南アジアではタクシーとして活躍しており、2000年代に入ってもその姿を見ることができたようだ。
なお、日野ハスラーは東京都八王子市にある日野オートプラザに収蔵されている。現在は緊急事態宣言を受けて一般公開を中止しているが、通常は無料で入場できるため、現在の状況が落ち着いた折には足を運んでみるのもいいのではないだろうか。