扱いやすさが際立った安定性の高いモデルも存在!
4)ポルシェ968
同じ独車でもポルシェにはまた違ったアプローチで「人馬一体」感に優れるモデルがあった。それは911ではなく968だ。フロントエンジン、リヤトランスアクスルというFRとしては理想的なレイアウトが採用された2ドア4シーターのスポーツクーペだ。パワーユニットには自然吸気3リッター直4を搭載。6速MTもラインアップされていた。
そのハンドリングはライントレース性に優れていて、エンジンパワーよりシャシー性能が大幅に勝る安定性にあふれていた。前後重量バランスの良さはブレーキングスタビリティに優れ、テールのリバース特性は穏やかでコントロールしやすい。
ABS(アンチロックブレーキシステム)の作動が絶妙で、全天候型の扱いやすさが際立っていた。リヤヘビーの911がスナップオーバーステアが強いことで嫌うアンチポルシェ層を黙らせる完成度だった。
5)ケーターハム
まったくジャンルは異なるが、英国の伝統的なライトウエイトスポーツカーである「ケーターハム」も自由自在に操れる超ご機嫌なスポーツカーだった。試走したのは「群サイ」と並び難コースと称される「修善寺サイクルスポーツセンター」のロードコース。自転車用のコースなだけに路幅が狭くRの小さいコーナーがいくつも連続している区間がある。
そこでケーターハムは「人馬一体」感にあふれ「意のまま」に操れる好特性を発揮した。どちらかというとアンダーパワーな自然吸気直4エンジンをフロントに搭載。MTを介して後輪を駆動する。LSD(リミテッドスリップデフ)も装備していないのに、アクセルターンも高速ドリフトも自由自在にこなせるのだ。これこそ軽さが威力を発揮した証で、ライトウェイトスポーツの真髄に触れることができた瞬間だった。
6)三菱ランサーエボリューション
国産モデルではどうかというと、「人馬一体」をもっともアピールしているマツダ車には該当車がなく、やはりランエボ(またか?)が素晴らしい。なかでもエボワゴンがじつはもっとも秀逸なハンドリングだったのだ。4WDのランエボはI〜IIIまではプッシュアンダーステアに苦労させられていた。それをACD(アクティブセンターデフ)やAYC(アクティブヨーコントロール)などの電子制御で曲げる努力をしてきていたのだが、エボワゴンをシェイクダウンしてみると想像以上に良く曲がる4WDとなっていて驚かされたのだ。
ワゴンボディとなって一番変わったのは前後の重量配分で、フロントヘビーなランエボの特性が改善されたのだ。AYCも装備していないのに「意のまま」に姿勢コントロールでき、4輪ドリフトもお手の物だった。あまりに素晴らしいのでエボワゴンのレース仕様を仕立て、S耐レースに参戦させたほど。またエボXの開発に当たりエボワゴンの重量配分に近づける事がマストとなり、重たいバッテリーがリヤトランク内に移設されたりしたが、それでもエボワゴンの完璧な重量配分には及ばなかったのだ。
生産車ではないが、同じくランエボのラリー仕様であるエボWRCは異次元のハンドリングだった。トミー・マキネンのドライブで4年連続世界チャンピオンに輝いたランエボラリー仕様の最終進化モデルではフロント、センター、リヤと3つのデフを電制としてドライバーの意思を見事に反映できた。このシステムがあればミドシップレイアウトも不要と言えるほどに完璧で、ドライバーはどんなコーナーでも意図する車両姿勢で自在に操れる。「意のままに操れる」とはこういうことを意味するのだと具現化していたのだった。