自動車の創成期にセダンは存在しなかった?
よく創成期のクルマはセダンではないという意見を聞く。確かにメルセデスの1号車やT型フォードはセダンではないが、発明されたばかりだったり、大量生産で安価にたくさん売ろうといういわばスペシャルモデル。戦前期のクルマは基本的に馬車から派生しているので、従者は外にいるものの、キャビンは独立していて、後部には荷物が積めるスペースがあるなど、セダンの要素を垣間見ることができる。
最後にクルマの性能として見ても、じつに素直なのがセダンという形式で、車高が低いのでコーナーも安定するし、空力も有利。エンジンルームとキャビン、ラゲッジが仕切られて独立しているので静粛性やボディ剛性も高くできる。着座姿勢も自然でゆったりだ。もちろんSUVやミニバンでも同様の性能を実現しているが、それはセダンライクな味付けを目指して違和感がないように努力してきたからというのはある。
1990年代から急速にステーションワゴン、ミニバン、コンパクト、SUVの波が続々と押し寄せてきただけに、困惑してしまう気持ちはわからないでもない。歴史や構造からすると、確かにセダンは基本と言えるのだが、つねに時代は変わるし、クルマの基本がなにかはユーザーには関係ないこと。基本がセダンだからセダンを買うという人はいないわけで、セダンが好きだから買って、結果としてセダンが自分の基本になる。もっと言ってしまえば好きなスタイルのクルマが、自分にとっての基本となればいいのではないだろうか。