コロナ禍から驚異的な復活! 決算から見えたトヨタの圧倒的な強さ

コロナ禍という逆風を追い風に業界トップクラスの利益率を実現した

 トヨタ自動車が2021年3月期第3四半期の決算発表をおこなった。

 今期については2020年1月に新型コロナウイルスが中国で発生、第1四半期にかけて欧州や北米に拡大していくなかで、苦戦を強いられてきたのはご存じのとおり。とはいえ、第3四半期(10月~12月)では、販売状況はかなり好転していることが、今回の決算発表で明らかとなった。

 たとえばトヨタ・レクサス車のグローバル販売状況を前年比の数字でみると、最悪だった4月は前年比54%だったが、10月は108%、11月が102%、そして12月は110%ともとに戻っているどころか、前年比を大きく上まわっている。

 市場別でみると、日本市場では10月に前年比137%と完全復活を感じさせる伸びっぷりで、その後も110%を超えるレベルで推移している。同様に中国市場でも10月が133%で、12月になっても117%と好調を維持している。他のエリアについては欧州の12月実績が前年比127%、北米市場の12月実績も117%と、ウィズコロナと思えないほど販売を伸ばしている。

 すなわち、前半での損失をだいぶカバーしているといえる。まだまだ2020年3月期に比べると営業収益、営業利益などは減っているが予想以上の速さで復活を遂げているといえるだろう。

 というわけで、2021年3月期通期での見通しは非常に明るい数字が並んだ。

 連結販売台数については前回の見通しから10万台を上乗せした760万台となり、営業利益2兆円、当期利益1兆9000億円へと上方修正した。前回の見通しでは営業利益は1兆3000億円であり、営業利益が7000億円も増えているというわけだ。

 その内訳について、トヨタは営業面での努力で5050億円、諸経費の低減努力で1400億円を生み出したと発表している。

 営業面での努力というのは単純にいえば台数を多く売ることであり、さらにいえば利益率の高い車種の販売比率を高めるということでもある。そのほか金融事業での利益増もここに含まれる。

 もうひとつ、諸経費の低減というと、主な要素は労務費・減価償却費・研究開発費となるが、1400億円のうち1250億円はそれ以外の経費削減で生み出したものだという。そして諸経費を低減していながら研究開発費については減らしていないというのは、自動車100年に一度の大変革期において攻めの姿勢は崩さないという強い意志が感じられる部分だ。

 2020年3月期の連結営業利益は2兆3992億円だった。それと比べると2兆円という数字は前期比割れということにはなるが、4月のグローバル販売が半減するなど第1四半期の販売が新型コロナウイルスの影響でメタメタだったことを考えれば、驚異的な復活を遂げたといっても過言ではない。

 なお、トヨタの数字をみて「自動車業界全体がよくなっているだけじゃないの」と思うかもしれないが、トヨタの勢いは突出している。それが明確なのは、第3四半期だけの営業利益率だ。営業収益8兆1500億円、営業利益9879億円だから、営業利益率は12.1%となる。

 自動車業界では営業利益率5%を超えれば優等生といわれる。第3四半期だけの数字とはいえトヨタの発表した営業利益率12.1%はあり得ないレベルなのだ(ちなみに前年同期の営業利益率は8.4%)。

 禍を転じて福と為す、販売台数世界一の自動車メーカーが、業界トップクラスの利益率を実現した。トヨタはコロナ禍という逆風を追い風として、企業体力を強化したことが、今回の決算発表から感じられるのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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