ヨーロッパではいまだに根強い人気を誇る
ワゴン、コンビ、ステ―ションワゴン……。クルマのカテゴリーとして、さまざまな呼び方がある。基本的には、セダンの派生系車で、荷室が車内で共有されている5ドア車を指す。日本でも70年代から80年代、いまで言うところのネオクラッシックカー世代ではクラウンやセドリックを筆頭に、さまざまなワゴンが当たり前のように日本各地を走っていた。
それが90年代になりRVブーム、そしてミニバンブームへとつながり、セダン派生系ワゴンは一気に姿を消した。最近の乗用ワゴンは、スバル「レヴォーグ」などごく一部にとどまっており、メーカー各社の新規ワゴン導入の計画は見えてこない。
一方、欧州車ではジャーマン3(メルセデスベンツ、BMW、VWグループ)を筆頭にセダン派生系ワゴンは健在である。なぜなのか?
端的に言って、需要があるからだ。欧州各国の住宅事情や道路事情を踏まえて、ワゴンは庶民生活のなかに組み込まれている雰囲気があり、モデルチェンジを続けることに、ユーザーも、ディーラーも、そしてメーカーも違和感がないのだと思う。機能性やファッション性という括りでは説明しきれないような、欧州自動車文化として、ワゴンが社会に根付いているのだ。
とはいえ、そんなワゴン大国・欧州でもSUVシフトの波が着実に押し寄せている。文字どおり、多目的車というカテゴリーとしては、SUVとワゴンはかち合う部分が多く、車内の居住性ではSUVに軍配が上がる場合が多い。それでも、欧州ではワゴンとSUVを当面、共存共栄させる商品戦略を続けていくだろう。
ただし、どこかのタイミングでSUVシフトがさらに大きく進む可能性は否定できないと思う。たとえば、デジタルネイティブと呼ばれる若い世代が新車市場での主要購買層になる10年~20年後には、電動化を含めて社会におけるクルマのあり方が大きく変わるかもしれない。
こうしたワゴンからSUVへのシフトは、アメリカではすでに完了してしまった感がある。80年代~90年代までは、フォード・トーラスやシボレー・カプリスなど大柄なステーションワゴンが庶民の足となっていたし、2000年代にはクライスラー(当時)が仕掛けたネオクラシカルなデザイン戦術のなかで、300Cの派生系ワゴンであるダッジ・マグナムがスマッシュヒットを飛ばしたが、いまのアメリカでステーションワゴンは絶滅危惧種だ。
ファッションのトレンドは数十年に一度の周期でリバイバルするというが、クルマのワゴンブームはアメリカ、そして日本で再燃しないのだろうか?