都市部の大気汚染を抑制する目的もある
また、マツダが示したエンジン車の熱効率向上についても、EVとウェール・トゥ・ホイールで同等という水準にはまだ達しておらず、CO2排出量は多い状況だ。エンジン車にも生き残りの道があるとの考えは、いつ実現できるかわからないのである。
なおかつ熱効率を高めるということは、ガソリンエンジンもディーゼルエンジンに近づける燃焼をさせるということで、その方策の一つがHCCI(予混合着火)であり、マツダは独創のSPCCI(火花点火制御圧縮着火)で実用化の道を拓いた。だが、まだディーゼルより燃費は悪い。さらに、排出ガス内の有害物質量の窒素酸化物(NOx)は、ガソリンを使いながら通常のガソリンエンジンより増えている状況だ。ディーゼルよりは少ないが、これでは大気汚染を進行させる懸念がある。
実際、国内でディーゼル車が普及したことにより、この冬の首都圏の上空は地平線近くが褐色に染まりだし、光化学スモッグ発生の予兆が見える。
排出ガスゼロの目的は、気候変動をもたらす温室効果ガスの一つであるCO2排出量を減らすことにあるが、同時にまた、大気汚染を防止することも含む。北京やロンドンやパリなど都市部の大気汚染を解消する目的もあるのだ。
全体としてのCO2排出量の検証は不可欠だが、同時にまた、EVのような排出ガスゼロによって排出ガス中の有害物質の放出も止めなければならないのである。
「木を見て森を見ず」の例えどおり、CO2だけでEVとエンジン車の環境性能を測ることはできないのである。