日本車にはないデザインや人と被らない希少性も魅力
ずいぶん昔に、イタリア車に乗っていたときのことでした。日本在住のイタリア人に話したところ、「なぜ、日本にはこんなに優秀な日本車がたくさんあるのに、わざわざイタリア車に乗るの?」と真顔で質問されてしまったのです。
てっきり喜んでくれるとばかり思っていた私は絶句。一緒にイタリア車の良さについて盛り上がるどころか、「確かになぜだろう? なぜ私は日本車に乗らないんだろう?」と悶々と悩むハメになったのでした。
その後、輸入車をメインで扱う自動車雑誌などで働きながら、その答えを探してはや25年。ようやく7つの理由が見えてきたので、ここでご紹介したいと思います。
1)見栄
まず1つ目は、きっと認めたくない人も多いと思いますが、だれの心にも大なり小なり存在してしまう「見栄」です。もしくは、ヒエラルキーから逃れたいという気持ちかもしれません。
たとえば25年前、手持ちの20万円で中古車を買おうとしたところ、日本車だとトヨタ・カローラやマツダ・ファミリアなど、いわゆる“大衆車”と呼ばれる車種がほとんど。でも輸入車に目を向けると、フォルクスワーゲン・ビートルやフィアット・パンダ、なかにはBMW3シリーズがあったりしました。
どちらが豪華に見えるか、乗っていて面白そうかといったら、やっぱり輸入車。絶対、日本車を選んでおいたほうが壊れないし堅実なのに「お値段以上」のクルマに乗っているように見られたい、という理由で輸入車を選んだ私は、かなりの見栄っ張りだったと振り返ります。
もちろん、新車で輸入車を買える人は、実際にお金持ちなんだろうと思います。でも、たとえば同じような車格のメルセデス・ベンツCクラスと、トヨタ・クラウン。最新のクラウンは走りも欧州で磨いており、装備内容もデザインも負けず劣らずだと評価されています。
それならもしCクラスが買える財力があったとしても、クラウンを選ぶこともできるはずなのですが、選ばない理由のひとつはやはり、メルセデス・ベンツのほうが裕福に見えたり、ブランド力が浸透していたり、といった「見栄」の部分の差ではないでしょうか。
2)デザイン
2つ目は、唯一無二のデザインに惚れた場合です。ここ10年くらいで日本車のデザインも世界に認められて、マツダがMAZDA3でワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞したりしていますが、やっぱり今でも輸入車のデザインは独創的なものが多く、魅力的。
イタリア車、フランス車、アメリカ車はとくに、日本人の感性ではとても発想できないようなモチーフや、美しいインテリアをクルマで表現するなぁと、いつも感心させられます。これは外観だけでなく、インテリアのデザインも同じ。クルマのデザインにひと目惚れしたなら、多少の弱点も価格の高さも、もはやあばたもえくぼ。十分すぎるほど、買う理由になるといえます。
3)他人と被りたくない
3つ目は、デザインなど個性があることとも関わってきますが、友人や同僚のクルマと「被りたくない」ということ。昔はとくに、男性にとってクルマは自分を表現するアイテムであり、モテ道具のひとつでもあったので、いかに友人より目立つか、いいクルマに乗るか、ということが重要だったんですね。
出し抜いたつもりが、日本車だと「えっ、お前も?」なんてまさかの“丸被り”という事態になりやすいので、あえて輸入車を選ぶということがあったようです。今でも、ちょっと天邪鬼な人は「みんなヤリスを買ってるからオレはプジョー208にしよう」なんて考える人もいるのではないでしょうか。