ドライバーとクルマの「一体感」が増した
じつは、CX-5の改良モデルに乗る直前に、前型にも試乗したのだが、軽めのアクセルペダルを踏み込むと、一瞬のタメがあり、そこからジワ~っと分厚いトルクが沸き上がる感覚だ。そのアクセル操作に対する出力、トルク特性が、先に触れた濃厚で上質極まるエンジンフィールをもたらしていたのだろう。とはいえ、そのタメによってアクセルを踏みすぎ、街中で思った以上に加速してしまい、無駄なブレーキを踏む。素早く加速したいのに、タイムラグがあってもどかしく感じる。追い越しでのパンチ不足を感じる……だからアクセルを踏み増す、といった場面もあったのが、前型なのである(結果的に燃費にもよくない?)。
改良型CX-5では、アクセルペダルの踏み初めのタメがなくなり、アクセルペダルの踏力と加速力が見事にリンクし、スッと前に出るため、ドライバーとクルマの一体感が増し、加減速のコントロール性が高まったぶん、前型にあったタメによるクリーンディーゼルエンジン特有のおおらかなトルク特性=濃厚感が低減したと思われる。すでに説明したアクセルペダルの自然な踏力の重さによって、アクセル操作に対してエンジンが安定して力を発揮できるようになると同時に、サイズを感じにくくなり(人車一体感)、G-ベクタリングコントロールの効果と合わせ、CX-5を一段とスムースに走らせることができるようになったことも実感できた。そう、運転のしやすさ、乗員の快適度UPはもちろん、クルマ酔いしやすい乗員にもやさしい運転が自然に可能になるというわけだ。
ちなみにエンジン本体は、トルクカーブのみ変更。実用トルクを持ち上げている……という内容で、具体的には前型は3000rpmぐらいでトルクカーブが穏やかになるのに対して、改良エンジンは約4500rpmまで伸びやかで図太いトルクが維持され、扱いやすさ、気持ち良さ、走りやすさを実感しやすいのである(前型オーナーならですが)。
今回はロングドライブを経験していないが、ペダルの操作力の改良によって、右足の疲労度は大きく軽減されると予想できる。それもそのはずで、ドイツ車のアクセルペダルがなぜ、重めなのか? その理由が、アウトバーンに代表される超高速走行、国境を超えるようなロングドライブでのペダル操作による疲れにくさにあるとすれば、これはもう納得ではないか。マツダは足や首、背中の筋肉とペダル操作の関係にまで踏み込み、研究を重ねて、こうした地道すぎる!? 改良に至ったのである。マツダらしいかなりマニアックな進化とはいえ、走りの質が高まったことは間違いないだろう。ちなみに、ペダルの重さの変更はSKYACTIV-D 2.2搭載モデルのみ。車体が重いクルマに向き、ガソリンエンジンより相性が良く、また小排気量エンジンには向いていないらしい。
そんな改良型CX-5だが、エンジン制御、先進運転支援機能のアップデート、ナビのサイズアップ、コネクテッド機能などの進化を含む価格アップは約5.5~9万円にとどめられている。
とはいえ、個人的には、ガソリン車と別物のトルク感、アクセルの踏み初めのタメによる濃厚感ある走りに特徴があったSKYACTIV-D 2.2の前型も全然悪くない、どころか気に入っていたんですけどね。