究極のレーシングカーにも取説が存在!
近年のモデルだとBMW M4 GTSの取説が凄かった。このクルマは、サーキットも走れる「クラブスポーツ」仕様としてフロントスポイラーやリヤウイングを装備しているのだが、それらのセッティング方法が専用の取説に記載されている。
フロントのスポイラー位置はジャッキアップしたうえで6本のボルトを緩め、前方に引き出して調整するが、その分量とダウンフォースの関係、リヤウイングとの空力バランスなどが事細かに記されている。スポイラー調整ボルトの締め付けトルクまで指示されているという本格的なもの。
さらにはGTSのリヤトランク内にウォーターインジェクション用のタンクが装備されている。これはエンジンの最高出力発生時、シリンダー内に水を噴射して燃焼温度を制御する特殊なシステムなのだが、ウォータータンク満水で独・ニュルブルクリンク1周、約22kmをカバーできることなどが書かれていた。
また近年の欧州の高性能車は2ペダルで、ローンチコントロールを装備しているのが当たり前となった。ポルシェもメルセデス-AMGも、その作動方法を丁寧に解説していて、作動条件や性能指標も示されている。メルセデス-AMGではさらに4WDの4マチックモデルで「ドリフト・モード」機能を備える車種があり、その詳細について記述されている。AMG GT Rではマニュアルのトラクションコントロール調整スイッチを装備していて、その取り扱い方法についての紹介、注意書きもあるのだ。
思い起こせばグループCレーシングカーのポルシェ962Cやル・マン24時間を闘ったマクラーレンF1 GTRにも取説が備わっていた。それらはおもに性能調整やセッティングに関して事細かに記されていて、とくに空力特性に特化したマクラーレンF1GTRではウイングの調整位置ごとに、前後車軸にかかるダウンフォース量やダウンフォースのかかる車軸間位置なども風洞実験データを基に記されていた。もはや取説というより「機密事項」に類する内容といえ、とても興味深いものだったのだ。
ぜひ、自分のクルマの取説をじっくり見て確認してほしい。数年間毎日乗っていたのに気がつかなかったような機能や性能が、じつは持たされているかもしれない。