トヨタの超小型EV「C+pod」がもつ大いなる可能性と「懸念」される事態 (2/2ページ)

急速充電器のさらなる普及がEVの可能性を広げる

 一方で、法人や自治体への限定販売であれば、個別に合意すれば納車できることになるので、無駄が少ない。なおかつ、SDGsへの取り組みが、企業や自治体で進みはじめ、再生可能エネルギーの導入などと合わせて、印象を好転させることにひと役買うことにもなる。

 それらの手続きを、ワンストップ(ひとつの窓口)で完了できるよう、電力会社などとの連携もトヨタは進めている。やりやすいところから、無駄なくEV導入を図るというのが、トヨタの戦略だろう。

 しかし別の視点で考えると、市場占有率で50%超えをするほどの日本一の自動車メーカーが、己の都合に良い取り組みだけを進めるなら、EV導入を進めようとしているほかのメーカーやインポーターは、これまでと変わらず苦労を強いられる。2030年からエンジン車販売を禁止するとした東京都も、販売促進の補助金を手厚くするようだが、もはや補助金政策ではEV普及は進まない状況だ。税金を使って、焼け石に水といった政策でしかない。

 トヨタが本格的に乗り出せば、EV導入に限っては管理組合の合意を得なくても、報告義務等だけでコンセントを設置できるような、30年までの時限的な特別措置の考慮なども可能になるかもしれない。

 また5000店を超えるトヨタの販売店に急速充電器が設置され、ホンダeの販売を通じてホンダも販売店への急速充電器の設置が完了すれば、全国に7000カ所の急速充電拠点が一気に増えることとなり、それは現在の2倍になる。普通充電器の拠点と合わせれば、ほぼガソリンスタンドの件数に近づく。そうなれば、集合住宅に住む消費者も、もう一度EVの購入を考えるかもしれない。

 トヨタが日本の自動車業界の盟主であるとするなら、業界が本当に成長できる施策に力を添えるようなEV戦略が求められる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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