スバル車に「0次安全」を犠牲にすることは許されない
SUBARUが古くから掲げる安全思想のひとつである「0次安全」。人間工学に基づいた車内の空間作りのことで、着座環境や視界、取り回し性を重視した設計思想を大事にしてきた。
SUBARUでは、たとえばフルモデルチェンジによりデザイン性が向上したり、ボディサイズが拡幅されたとしても、着座環境や視界、取り回し性は決して犠牲にしてはならないとの掟が厳守される。
いかに美しいデザインが採用されたとしても、デザイン性向上とのトレードオフとして、わずかでも運転がしにくくなれば、SUBARU的な設計思想は後退したと評価せざるを得ない。良いデザインを得たのと引き換えに、視界が悪化した分はバックカメラやセンサーで補うなどといったゴマカシは、SUBARUらしさを失うことに他ならないのだ。
SUBARUは「1次安全」のアクティブセイフティ「能動的な安全」、さらに「2次安全」のパッシブセイフティ(受動的な安全)も古くから重視してきた。ワゴンやSUVでもスポーツカー的な運動性能を発揮して危険を回避。万が一事故に見舞われても、世界トップクラスの衝突安全ボディが乗員を守る。
しかし、1次と2次の安全は、いわば想定される事故に備えるための安全対策。一方の「0次安全」(ベーシックセイフティ)は、「能動」や「受動」よりも前の段階で事故を回避するためので、そもそも事故を起こしにくいクルマ作りを目指す思想というものだ。
この「0次安全」の原点は航空機メーカー時代に培われた。航空機は、わずかな操作ミスが墜落を招き、即命取りの大惨事となることから、そもそも事故を起こしにくい設計が求められる。今でもSUBARUが「0次安全」を大事にする姿勢は、元航空機メーカーらしさのひとつと言えるだろう。