「音量」と「速さ」は関係ある? レーシングカーが「うるさい」ワケ (2/2ページ)

大音量サウンドはレーシングカーならではの魅力だ

2)消音器が最小だから

 じつのところ、どんなに大パワーのエンジンでも、大きな消音器=マフラーさえ装着すれば、エンジン音は小さくできる。

 たとえば、スーパーGTのGT500のマシンは、想定馬力が約500馬力(実際は550馬力以上)といわれているが爆音仕様で、ロードモデルの日産GT-R(R35)NISMOは、600馬力だが保安基準をクリアする静かな音量になっている。

 しかし、消音性能のいいマフラーは、排気効率の妨げになる。エンジンにたくさん空気を吸わせてパワーアップを図るには、排気ガスができるだけ早く燃焼室の外に出ていくことが重要。排気効率だけを考えれば、エキゾーストシステムはマフラーなしの“直管”がベスト。その代わり、直管マフラーでは当然爆音になってしまう……。

 排気抵抗の少ない、ストレート構造のマフラーで消音する方法もあるが、その分、大容量のマフラーにしないと音は小さくできない。

 レーシングカーの場合、軽量化は最重要課題であり、空力のことなどを考えると、マフラーのためのスペースは最少にしたい。そう考えると、大容量マフラーはデメリットしかないので、最小のマフラーでレギュレーションギリギリの音量を狙うことになり、必然的に音量は大きくなる。

3)迫力あるサウンドは、レーシングカーの魅力だから

 なんだかんだいって、クルマ好きにとって、迫力あるエンジン音は大きな魅力。

 鈴鹿サーキットのサウンドオブエンジンや、FSWのNISMOフェスティバルなどのイベントで、往年のレーシングカーが駆け抜けていくと、音量規制が緩かった時代のレーシングカーの音の方がカッコいい! とくにNAのV12気筒エンジンの高回転音などは、いまのレーシングカーより魅力的に思えるはず。

 そうした魅力を知っているからこそ、レース関係者も地域の環境に配慮しつつ、レーシングサウンドを残す道も探っているので、いまでもそれなりに迫力のある音を維持している。

 しかし、この先音量規制が厳しくなるのは確実で、近い将来フォーミュラEなどの電気自動車レースが主流になったら、もうこうした楽しみも……。

 今のうちに直接サーキットに足を運んで、迫力あるレーシングサウンドを全身に浴びておいた方がいいかもしれない!?


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
趣味
-
好きな有名人
-

新着情報