雇用調整助成金が終了したら退職者続出の可能性も
新型コロナウイルス感染拡大が始まったころも、「コロナが怖い」として、1カ月の間自主的にタクシーに乗るのをやめた仲間がいると、運転士さんが話してくれたのを思い出した。先日テレビを見ていたら、「タクシーに乗ると、運転士から感染するのが……」といった報道があったが、タクシー乗務員の高齢化が進んでいるのは周知の事実。もちろん、若年ドライバーもしかりだが、高齢ドライバーはとくに乗客から感染することを警戒している。感染を警戒するのはお互いさまなのである。
緊急事態宣言発出前であっても、“お父さん”たちは、それこそ“嫁ストップ”もあり、盛り場でお酒を飲むという機会が激減し、若者ばかりが目立っていた。だが「若者は無症状感染が多い」とし、夜は早めに帰庫したり、若者を見かけたら感染云々のほか、酔っていればトラブルになることも多く、深夜に若者を見かけたら回送表示にするといった話も聞いたことがある。
雇用調整助成金は当初、2020年末で打ち切りとなる予定であった。その当時は、雇用調整助成金の支給が終了と同時に、高齢運転士の一斉退職が起きるのではないかと言われていた。すでに年金を受け取りながら乗務している運転士も多く、本人または家族の感染リスクへの心配もあるので、“潮時”と考える人が多くなるのではないかというのがその理由であった。その後、雇用調整助成金は3月末まで延長となったが、いまのような状況が続いていれば、再び支給終了のタイミングで大量離職の可能性は高いといわざるをえないだろう。
もともと、路線バスやタクシーの運転士不足は深刻であった。そのため路線バスの減便が全国各地で目立ち、タクシーも十分な台数を稼働させるのが難しくなっていた。そして、新型コロナウイルス感染拡大がなかなか収束しないなかで、離職する運転士が多くなれば、いままで当たり前のように利用できた路線バスやタクシーの利用が、都市部でさえ“当たり前ではなくなる”時期が前倒しされてしまうことは十分考えられるといえよう。