ラリーはOKでもレースは激ムズ! 日本初の市街地レースから見えた「高すぎる」ハードルとは (2/2ページ)

将来的には電気を使った専用モデルでレース開催も!

 ましてや江津市で開催された市街地レースは、前述のとおり、駅前に面した国道と県道を封鎖し、住宅はもちろん、郵便局や銀行、ホテル、ガソリンスタンド、喫茶店などの商業施設が立ち並ぶ生活道路で開催。

 山陰エリアの地方都市とはいえ、“街の中心部”で開催されたことは前例のないトピックスで、ある日本のラリー関係者も「山間部の林道でもスペシャルステージの設定は大変だけど、江津のレースは市街地を封鎖したわけでしょ? クルマの展示とかデモランなら危険性が低いから許可もとりやすいと思うけど、レースとして開催したからスゴイよね」と感嘆。この言葉からも、いかに江津のA1市街地レースが画期的なレースだったかがうかがえるだろう。

 この前例のない市街地レースを、なぜ江津市は開催できたのか? その最大の理由が前述のとおり、競技車両にレンタルカートを使用したことにある。同モデルの最高速度は80km/hで、車両重量も140kg前後と軽いことから安全性が高く、仮にコースアウトしても、レンタルカート用に設計された完全防護体「Go Track」だけで衝撃を吸収可能。事実、2020年のA1市街地レースGOTSUでも決勝中に多重クラッシュが発生したが、ドライバーやオフィシャルに怪我はなく、該当するドライバーたちもすぐにレースへ復帰し、無事にフィニッシュしていた。

 また、完全防護体のGo Trackは重量が軽く、簡単にコース設営がおこなえることから、わずか2時間でコース設営およびコース撤去を実現。250名のボランティアスタッフのサポートにより、9時にスタートしたコース設営から15時の撤去完了まで大会当日に要した時間は6時間だったが、この極めて短い開催時間も市街地レースが実現できたポイントといえる。

 当然、コースの全長を長くすれば、コースの設営およびコース撤去にも多くの時間が必要となり、大会の開催期間も長くなることから、道路使用および道路占用の許可に対してハードルが高くなることが想像できるが、A1市街地レースクラブの上口剛秀代表によれば「2020年の大会は新型コロナウイルスの影響もあって規模を縮小しましたが、通常開催であれば3万人の集客で4億円の経済効果が期待できるので、地元の方々がレースを絡めていろんなイベントを町おこしとしておこなうことができるなら拡大できると思います」とのことで、決勝を含めたレースの長時間化やコースの全長拡大などもおこなえることだろう。

 また上口代表は「将来的にはレンタルカートだけではなく、電気を使った専用モデルでレースを開催したい」と今後の展望を語る。シングルシーターでも四輪車両であればハイスピードかつ車両重量が重たくなることから、安全性を担保するためには、フォーミュラEのようにコンクリートウォールに加えてデブリフェンスが必要になり、それゆえに、コースの設営・撤去にも多くの時間を要することが予想されるが、これについても上口代表は「スピードが重要で80km /hであればカート用の防護体でも部分的に二重にするなどの対策をおこなえば十分に安全を確保できると思います」とのこと。確かにトップスピードが低く、低車重かつ低車高の専用モデルであれば、EVカーになっても簡易の防護帯で安全性を確保できる可能性は高い。

 A1市街地レースクラブではテクニカルワーキンググループを発足し、市街地レースのシリーズ化に向けて開催候補地の選定をおこなうなど新たなチャレンジの準備を開始。2021年は2回目のA1市街地グランプリの開催に向けて島根県江津市と協議をおこなっているほか、2022年にはシリーズ戦として全国5カ所から7カ所でのレース開催を計画しているだけに、今後もA1市街地グランプリに注目したいものだ。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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登山
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