高級車を作り上げる匠の技を失ってはいけない
センチュリーは、国内専用の高級車として生き残るため、モデルチェンジの機会を抑えながら、改良で存続し得たといえそうだ。それは単に投資を抑えたというだけでない、トヨタの狙いがあったのではないか。
トヨタは、ほかの量産市販車では生産の効率化を進め、さらに匠の技のデータ化などにも取り組み、高度な生産技術の構築により、品質と原価低減の両立を模索してきた。しかし、センチュリーの製造においては、一台一台を手作りし、組み立て作業では4人の職人がすべての作業を行うことで生産し続けた。
量産車での匠の技のデータ化をするにしても、そもそもの人の手による技が途絶えてしまったら先はない。また、初代トヨペット・クラウンの開発においても、国産の自社技術のみで製造することを志したように、トヨタは手もとに技術を残すことへのこだわりが、いまなお強いのではないか。
ものづくりの伝統を継承する使命も、センチュリーには託されていると見ることができる。それであれば、途絶えさせるわけにはいかない。その意味で、センチュリーの存在は、単に世界の名車と伍す高級車というだけでなく、優れた自動車技術伝承の象徴といえるのではないか。