発売当時は個性的すぎていても今では時代に合っていることもある
3)日産マイクラC+C
次は、2007年から2010年まで、日本ではわずか1500台のみ販売された、日産マイクラC+C。マイクラはマーチの欧州名で、4人乗りのクーペカブリオレでした。名前からもわかるとおり、そもそもはヨーロッパの人たちに向けて販売されていたもので、おそらくそれを見た日本人が「これいいんじゃない、日本でも売って欲しいなぁ」と無責任に言ったのではないか、と推測されますが……。
確かに、日本でのマーチはコンパクトカーとしてはオシャレ路線で、女性からも男性からも人気がありました。でも、でも、やっぱりベースは実用車なんです。「実用車なのにオシャレ」というところが絶妙に響いていたのだと思うんです。それが、屋根が開くオープンカーになってしまうと、室内は狭いし静粛性は劣るし、値段も高くなって、実用的ではない単なるオシャレカーとして勝負しなければならないわけですね。
当時、日本にはフォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレとかプジョー207CCとか、ヨーロッパのコンパクトなオープンカーがそろっていて、やっぱりそのオシャレさと比べてしまうと、日本人はそちらになびいてしまうのは仕方のないところでした。
でも、今この時代なら、実用性だけじゃない遊び心や余裕を持ったコンパクトカーって、すごく抜け感があっていいんですよね。見栄は張らないけど、等身大でいいけど、あくせくするよりは人生チカラ抜いて楽しもうよ、みたいな気分にマイクラC+Cがすごく合っていると感じます。限定車だったのでなかなか中古車も少ないとは思いますが、ぜひ探してみてくださいね。
4)ダイハツ・ミラジーノ
続いては、1999年から2009年まで販売されていたダイハツ・ミラジーノ。クラシックな雰囲気を前面に出してデザインされた、セダンタイプの軽自動車です。もちろん、名前のとおりダイハツの旗艦車種の1つであるミラの派生車種で、丸目のシンプルなヘッドライトや、メッキで囲まれたフロントグリル、メッキバンパーといったモチーフは、1960年代に販売されていたコンパーノのイメージを継承したものとされています。
なので、その辺りに郷愁を感じる人や、クラシックな雰囲気が好きな人には好評だったものの、欧州車をよく知る人たちからすれば、「MINIそっくり!」と驚きを隠せないところもありました。本家本元は50年代から世界中で売られているベストセラーカーですから、その二番煎じのようなクルマはちょっと……と敬遠していた人も少なくなかったと思います。
でも今となっては、クラシックMINIはもうほとんど日本で見かけなくなり、ミラジーノも登場から20年以上が経過して、いい感じにヴィンテージに近づきつつあり、とってもオシャレ。肩肘張らずに乗れるのではないかと思います。
5)日産エスカルゴ
そして最後は、ちょっと古くなりますが1989年から1990年の2年間のみ販売していた、日産エスカルゴ。商用のライトバンなんですが、パイクカーと呼ばれるデザインに特徴のあるクルマで、名前の通りその姿はまるでカタツムリ。フロントフェンダーから突き出て、そのままルーフまで伸びるピラーがカタツムリの殻のようなフォルムを作り出して、後ろはストンと断ち落としたような平面のバックドアになっています。
フロントマスクは、カタツムリの目玉のようにちょこんと丸いライトが付いていて、商用車といえどもかなりキュートでクルマらしくない雰囲気を漂わせていたのです。もちろん、お店の配達車や営業車などとして使うと、目立つし宣伝効果は高かったのかもしれないのですが、どこかオモチャっぽい印象は拭えず、オシャというよりは奇妙なクルマという感覚。
でもそれが今では、わずか全長3.5m弱のボディの後ろ半分がパネルという斬新さや、余計な装飾のないシンプルなインテリアは、若い世代が見たらレトロだけど新鮮で、すごく魅力的に映るのではないでしょうか。
というわけで、発売当時は個性的すぎたクルマ、時代を先取りしすぎたクルマ、とんがりすぎていたクルマたちですが、今なら気負わずにオシャレに乗れそうなクルマたちをご紹介しました。新車のときは売れなくても、10年後、20年後にスポットライトが当たるクルマがあったり、トレンドにピタリとはまるようになっていたり、不思議なものだなと思います。
ここ最近は、あまり奇想天外なクルマが誕生しにくくなっているようにも感じるので、また私たちの度肝を抜くようなクルマを自動車メーカーには作ってもらいたいなと願います。