グローバルではクルマの価格が上昇基調にある
さて、軽自動車という日本専用商品はおよそ10年間で10%程度しか値上がりしていないといえそうだが、登録車はもっと値上がりしている印象がある。
その理由としてグローバルモデルであるからという見方がある。世界中で売るクルマについては、ある程度は仕向け地にあわせてローカライズするものだが、基本となるコストの計算では世界経済の影響を受ける。そして、この20年以上日本がデフレに陥っているのに対して、世界は緩やかにインフレを進めている。
たとえば、アメリカのインフレ率を見てみると、この10年で約1.2倍となっている。年によって浮き沈みはあるが、中期的にはしっかりと経済が成長している。インフレが進むということは人件費も上がるということであり、それはクルマの価格を上昇させる要因のひとつになる。
参考までに、アメリカで売れているホンダ・シビックの価格を調べてみると、2012年のエントリーグレードは1万5605ドルだったのに対して、2020年には2万1050ドルへと、約35%も上昇している。ちなみに、日本では先代シビックは未発売なので単純比較はできないが2008年モデルのエントリー価格が税抜き184万5000円で、2020年には251万円となっていた。価格上昇率としてはアメリカと同等である。
もちろん、こうした価格上昇には主に安全面における装備の充実というコストアップ要素もあるが、インフレが進んでいることで車両価格が底上げされているという面も無視できない。細かい仕様の違いなどは置いておいて、スターティングプライスをこれだけ上げられるというのは市場ニーズに見合っているということだ。
こうしてグローバルにはクルマの価格が上昇基調にあるなかで、日本はデフレから脱却できないために、ユーザーからするとクルマの値段が上昇していると感じる状況になっているといえる。とはいえ、ユーザーが買わないような価格に設定したモデルが売れるはずはない。冒頭で例に挙げたN-BOXがコロナ禍においても売れているように、実際に新車を買えるユーザー層においては、価格以上の価値はしっかりと認められているといえるのだ。