空気抵抗は速度の2乗に比例して悪化する
燃費を悪化させる要因の一つに、高速での空気抵抗がある。空気抵抗は、速度の2乗に比例して悪化する。たとえば速度が2倍になったとき、空気抵抗はその4倍も増大するのである。高速で走行することが、燃費を悪化させ、二酸化炭素(CO2)の排出量を増大させ、環境に影響を及ぼす要因になるのだ。欧州で採用されるWLTCの超高速モードでも時速130kmまでしか計測されておらず、それでも95g/kmというCO2排出規制の達成が難しい状況だ。
空気抵抗はまた、電動化のなかで電気自動車(EV)の導入に影響を及ぼしている。超高速で走行することによる空気抵抗の増大により、リチウムイオンバッテリーに充電された電力の消費が激しくなる。たとえばメルセデス・ベンツのEQCは、最高速度を180kmとしている。それ以上の速度になると、さらに電力の消耗が激しくなるからだ。
安全と環境を含めた時代の要請に対し、無制限の高速走行はもはやそぐわなくなっている。実際、ドイツ以外の欧州各国の高速道路における速度制限は、時速130kmだ。追い越しなどを考慮しても、瞬間的な速度として時速180km以下というのが現実的な線引きといえる。ドイツ人は承服できないかもしれない。だが、速度無制限は、すでに世界の非常識となりつつある。