「オートクチュール」という考え方をクルマに応用した
海外では、一部の高級自動車メーカーがディーラーを通じた特注扱いとして、ユーザーひとりひとりに対するカスタマイズに対応するシステムがある。一方で、日本車ではスポーツカーなど、ごく一部でそうした事例は過去にあったものの、現在ではほとんど存在しない。
その理由について考えられるのは、単にメーカー側の手間やコストがかかるというだけではなく、カスタマイズへの本質的な考え方に、欧州などの高級メーカーと日本メーカーとの間で、違いがあるからではないだろうか。
そもそも、カスタマイズについて、欧州メーカーが積極的だったワケではない。状況が大きく変わったのは、90年代に市場が拡大した、メルセデス・ベンツのアフター系需要だ。当時は、ブラバス・ロリンザー・カールソンが御三家と呼ばれた。
そうした風潮を強く意識した形で、AMGがダイムラーに買収され、ブランドとして内製化された。ダイムラーの狙いは動力性能だけではなく、内外装でのカスタマイズがブランド戦略として有効であり、かつ客単価が高いことでの収益性が高い点にある。こうした動きが、BMWやアウディへと広がり、さらにベントレーやロールスロイスなどダイムラーよりひとつ上の超高級ブランドへ伝播した。
そもそも、欧州の高級ファッションブランドでは、高級既成品「プレタポルテ」に対して、オーダーメイドによる一品モノ「オートクチュール」という概念があり、これをクルマに応用したと言えるだろう。