ノーマルエンジン車の代わりは軽自動車が担っている
ここまで価格が高まると、困るユーザーもいるのではないか。そして先代ノートにおいて、仮にe-POWERの販売比率が75%でも、25%はノーマルエンジンが売れていた。求めやすい価格のグレードが欲しいユーザーもいるだろう。この点は販売店にたずねた。
「新しいノートはe-POWERのみだから、価格が高いという意見も多いです。そのときはまず、残価設定ローンを推奨します。月々の返済額を安く抑えられるからです。また軽自動車のデイズやルークスを含めて商談します。デイズでも車内はノートと同等に広く、荷物も積みやすいです。内装の質感や乗り心地は、先代型に比べて上質になりました。ノートのノーマルエンジン車の代わりになるのが、デイズといえるでしょう。軽自動車は税金が安いので、法人のお客様に喜ばれることも多いです」。
ノートXの残価設定ローンでは、3年後の残価率(新車価格に占める残存価値の割合)を44%に設定している。車種によっては50%を超えるから、ノートは特別に残価率が高いわけではないが、それでも残価設定ローンを使うと月々の返済額を安くできる。e-POWERの価格が高くても、残価設定ローンを推奨すると、ユーザーの購入意識を促しやすい。
軽自動車も日産のデイズやルークスは設計が新しく、衝突被害軽減ブレーキは、2台先を走る車両まで検知する。日産では軽自動車の販売が好調で、2020年に国内で売られた日産車の43%を占めた。このようにノートがノーマルエンジンを廃止した今、日産にとって軽自動車が従来以上に大切になっている。
それならマーチはどうなのか? 販売店では「マーチも2020年にマイナーチェンジを実施して、衝突被害軽減ブレーキを採用しました」というが、売れ行きは伸びない。改良を実施したのは2020年7月だから、9〜10月の登録台数が注目されたが、500〜800台程度で低迷している。
つまり今のマーチは、安全装備を充実させた程度では登録台数を増やせないわけだ。したがってノートがノーマルエンジンを廃止しても、マーチが売れることはないだろう。その代わり商品力とブランドイメージを向上させた軽自動車が選ばれる。小型車が売れ行きを下げて軽自動車が好調に売れる背景には、日産に限らずほかのメーカーでも、同じような構図がみられる。